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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2012.05.09

脳の層構造を作る分子を発見

基礎生物学研究所・統合神経生物学研究部門の新谷隆史准教授と野田昌晴教授らは、APC2 (Adenomatous polyposis coli 2)という脳神経系に発現する分子の機能を明らかにする研究を進めています。同グループでは、APC2遺伝子を欠失させたマウス(APC2を働かなくしたマウス)を作成し、その脳における異常を解析しました。その結果、APC2を欠失したマウスの脳では、神経細胞の移動に異常があり、大脳皮質、海馬、小脳などの様々な領域で、神経細胞の正常な層構造が形成されないことを見出しました。さらに詳しい解析の結果、APC2が細胞外の細胞移動を導く情報を、細胞運動に必須である細胞骨格(アクチン骨格・微小管)のダイナミクス(形成・分解・安定化)に正しく反映させるという重要な役割を果たしていることが明らかになりました。このようなメカニズムで、脳の層形成に必須の役割をしている分子が明らかになったのは初めてのことです。APC2を欠損したマウスは、運動機能の異常や、てんかん発作などの異常を示すことから、ヒトにおいて神経細胞の移動の異常によって生じる疾患が発症する仕組みや、それらの治療法の開発につながる可能性があります。この成果は、5月9日に神経科学専門誌 Journal of Neuroscience に掲載されます。

 

 

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新谷隆史准教授と野田昌晴教授