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プレスリリース概要

2025.08.20

植物の「光ストレス応答」と「ゲノム可塑性」を繋ぐ発見:DET1タンパク質による光合成光防御反応とトランスポゾン活性化の統合制御

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
 
植物の光合成装置を過剰な光ストレスから守るNPQ反応を制御するタンパク質因子「DET1」が、ゲノム内の“動く遺伝子”であるDNAトランスポゾンのサイレンシングにも関与することが明らかになりました。DET1遺伝子が欠損した緑藻クラミドモナス変異株は、弱光条件下において当初はきわめて遅い成長を示しますが、やがてその成長は劇的に改善されます。この回復は、DNAトランスポゾン「Bill」が光保護遺伝子LHCSR転写因子に自発的に挿入されNPQ反応を無効化することによって引き起こされたものでした。この発見は、緑藻細胞内において、LHCSRを介した短期的な環境応答能力と、トランスポゾン活性化による長期的なゲノム適応能力とが、DET1によって統合的に制御されているという、これまで知られていなかった新たな分子メカニズムの存在を示唆しています。本成果は、生物が環境の変化や変動に対してどのように適応し進化してきたのかという根源的な問いに、新たな視点を提供するものです。本研究は自然科学研究機構基礎生物学研究所環境光生物学研究部門の鎌田(藤村)このみ研究員と皆川純教授によって行われ、その成果は英国の専門誌New Phytologist電子版(2025年8月7日付)に掲載されました。
 
fig0.jpg 図:通常時(弱光)、野生株ではLHCSRの転写因子とトランスポゾンの活性はDET1によって抑制されていますが、DET1を欠損すると(det1変異株)、LHCSRは転写されてNPQ反応が上昇するとともに、トランスポゾンの抑制が解除されます。