自然科学研究機構 基礎生物学研究所
ヤギェウォ大 マウォポルスカ研究所 植物分子生物学研究室
新潟大学
甲南大学
基礎生物学研究所の及川和聡 元研究員、近藤真紀 技術職員、木森義隆 元特任助教(現 福井工業大学)、真野昌二 准教授、西村幹夫 名誉教授 (元甲南大学 研究員)、ヤギェウォ大学の後藤志野 研究員、山田健志 研究室長、新潟大学の林八寿子 准教授、加藤朗 准教授、甲南大学の上田晴子 准教授、西村いくこ 名誉教授らを中心とした国際共同研究チームは、岩手大学の高橋大輔 研究員・上村松生 教授、東京工業大学の大隅良典 栄誉教授、京都大学の沼田圭司 教授らと共同で、オートファジーが、活性酸素種(ROS)の蓄積したペルオキシソームを優先的に分解することで、強光下で生じる植物細胞への傷害を軽減し、植物の生存に寄与していることを発見しました。また、オートファジーに関わるタンパク質ATG18が、分解されるペルオキシソームを特異的に標識することを示しました。さらに、分解されるペルオキシソームがオートファゴソーム膜に囲まれ液胞に輸送されるマクロペキソファジーに加え、液胞膜で覆われ、液胞内部に輸送されるミクロペキソファジーが誘導される可能性を示しました。この様子は単離液胞を用いた解析により明確に確認されました。
上記の成果は、光条件下におけるオートファジー変異体の生理解析と、共焦点顕微鏡と電子顕微鏡を用いたイメージング解析、そして生化学的手法を活用し、それらを統合して解析することで、植物におけるペキソファジーの重要な役割を明らかにすることに成功しました。
本研究成果は、国際科学誌『Nature Communications』に2022年12月5日付で掲載されました。
図. オートファジーによるペルオキシソーム分解機構の模式図
活性酸素種(ROS)の蓄積したペルオキシソーム内部には、活性の低下したカタラーゼの凝集が生じる(1)。その近辺にホスファチジルイノシトール-3-リン酸(PI(3)P)の形成とATG18の集積が生じる(2)。他のオートファジー関連因子と協調して、オートファゴソーム膜がペルオキシソームを包む(3)。マクロペキソファジー(i)とミクロペキソファジー(ii)により液胞へ輸送され分解される。