English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

  • Home
  • ニュース
  • > バクテリアから植物に侵入してきた遺伝子が植物の陸上進出に必要だった水通導組織を作ることを可能にした 〜体の厚みを作る細胞分裂方向を操る仕組みの発見〜

ニュース

プレスリリース概要

2023.01.17

バクテリアから植物に侵入してきた遺伝子が植物の陸上進出に必要だった水通導組織を作ることを可能にした 〜体の厚みを作る細胞分裂方向を操る仕組みの発見〜

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
金沢大学
大阪大学

約4億7千年前に淡水域から陸上へ進出する前の植物は、細胞が縦に繋がった糸状の形や、細胞が平面上に1層に並んだ形をしていたと考えられています。一方、現在陸上で生きている植物(陸上植物)は、細胞が何層も重なった厚みや太さのある体をしています。この体の厚みは、並層分裂と呼ばれる細胞分裂によって生み出されます。この分裂により陸上植物は、体中に水を運ぶ管(水通導組織)を作り出したり体を支えたりすることができ、乾燥した陸上環境でも生活できたりするようになりました。従って、並層分裂が植物の陸上進出の原動力の一つとなったと考えられますが、植物の進化の過程で、どのような仕組みによって並層分裂がもたらされたのかは明らかになっていませんでした。

金沢大学の小藤累美子 助教、藤原彩花 元大学院生、基礎生物学研究所の石川雅樹 助教、堀内雄太 元大学院生、長谷部光泰 教授、大阪大学大学院理学研究科の藤本仰一 准教授、鎌本直也 大学院生(博士後期課程)、米国デューク大学のPhilip Benfey 教授らによる国際共同研究チームは、コケ植物の一つヒメツリガネゴケを使って、土壌中のバクテリアから陸上植物の祖先のゲノムDNAに侵入したGRASファミリーのメンバーである3種類の遺伝子が、細胞ごとの分裂方向を巧みに操ることで特定の細胞のみで並層分裂を起こさせ、植物の陸上進出を可能にした水通導組織を作り出すことを明らかにしました。

本研究成果は2023年1月16日の週に米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』に掲載されます。

fig1.jpg
図: 植物の陸上進出