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プレスリリース概要

2015.11.20

霊長類の大脳皮質で多細胞活動を長期間・同時計測 〜詳細な脳機能マップ作製のための基盤技術を開発〜

理化学研究所

自然科学研究機構 基礎生物学研究所

革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト

日本医療研究開発機構

 

霊長類の大脳皮質で多細胞活動を長期間・同時計測

-詳細な脳機能マップ作製のための基盤技術を開発-

 

 理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダー、定金理研究員らと、自然科学研究機構基礎生物学研究所光脳回路研究部門の松崎政紀教授、正水芳人助教らの共同研究チームは、2光子顕微鏡と蛍光カルシウムセンサーを組み合わせた手法により、マーモセットの大脳皮質で、長期間にわたり、数百個の神経細胞の活動を同時に計測する技術を開発しました。

 ヒトが持つ高次脳機能の基盤メカニズムを解明し、精神・神経疾患を克服するためには、ヒトが属する霊長類の脳をターゲットとした研究が不可欠です。2014年に日本で開始された「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳プロジェクト)」では、新世界ザルであるマーモセットをモデル動物として、霊長類脳の神経ネットワークの全容を細胞レベルで理解することを目標としています。

 本研究では、マーモセットの大脳皮質において単一細胞レベルで多細胞の神経活動を長期間にわたって計測し、解析するための技術開発を目指しました。神経活動の計測には、蛍光カルシウムセンサーを神経細胞に発現させる必要がありますが、げっ歯類で使われている従来の方法を霊長類に応用しても蛍光カルシウムセンサーの発現が低く、顕微鏡での観察は困難でした。共同研究チームは、テトラサイクリン発現誘導システムと呼ばれる遺伝子発現誘導システムを用いて、蛍光カルシウムセンサーの発現を増幅することでこの問題を解決しました。これにより、マーモセットの大脳皮質の体性感覚野において、数百個の神経細胞の活動を同時に計測することに成功しました。また、同一の神経細胞の長期間(100日以上)にわたる継続的観察も可能としました。さらに、神経細胞の細胞体だけでなく、樹状突起、軸索からも体性感覚応答を計測することに成功しました。

 今後、開発した計測技術を用いた研究によって、知覚・運動・認知など霊長類の脳機能の基盤となる神経ネットワークの理解が大きく進展すると考えられます。また、この計測技術を、精神・神経疾患モデルマーモセットにおける神経ネットワーク変容の理解に役立てることで、新たな治療方法の開発につながると期待できます。

 本研究は、日本医療研究開発機構『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』および『脳科学研究戦略推進プログラム』(両事業とも平成27年度より文部科学省から移管)の一環として行われました。成果は米国の科学雑誌『Cell Reports』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(11月19日付け:日本時間11月20日)に掲載されます。

 

※共同研究チーム

理化学研究所 脳科学総合研究センター 高次脳機能分子解析チーム   

 チームリーダー 山森 哲雄(やまもり てつお)

 研究員     定金 理 (さだかね おさむ)

 研究員     渡我部 昭哉 (わたかべ あきや)

 

自然科学研究機構 基礎生物学研究所 光脳回路研究部門

 教授      松崎 政紀 (まつざき まさのり)

 助教      正水 芳人 (まさみず よしと)

 大学院生    寺田 晋一郎 (てらだ しんいちろう)

 

fig1.jpg

マーモセット大脳皮質神経細胞の自発活動イメージング

 

fig0.jpg

共同研究チーム・右から山森哲雄チームリーダー、定金理研究員、松崎政紀教授、正水芳人助教