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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2007.07.13

細胞内の分解/リサイクルのシステムを支える膜形成の仕組みを解明

基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門の中戸川 仁 助教および大隅 良典 教授らは、細胞内の分解/リサイクルシステムであるオートファジー(自食作用)における特殊な膜構造を作り出す仕組みを明らかにしました。オートファジーとは、細胞が持つタンパク質や構造体を大規模に分解/リサイクルするための仕組みのことです。オートファジーは細胞内の新陳代謝を高めたり、飢餓時には分解産物からエネルギーを得るなど、様々な生命活動において重要な働きをしています。オートファジーには、分解すべきものを取り囲んで隔離する特殊なふくろ(オートファゴソーム)が必要ですが、このふくろを作り上げる仕組みはこれまで謎に包まれていました。研究グループは、オートファゴソームの形成に必要な「Atg8」という小さなタンパク質に、ふくろの材料となりうる脂質膜同士をつなぎ合わせ、特殊な融合状態(ヘミフュージョン)にする機能があることを明らかにしました。さらに、このAtg8の機能は、オートファゴソームの膜を大きく伸ばす段階に重要であることを発見しました。本発見は全く新しい生体膜形成メカニズムを示しており、オートファジーのメカニズム全容解明のための突破口となると期待されます。また最近、オートファジーは細胞内の浄化メカニズムとして、パーキンソン病やハンチントン病といった神経変性疾患等の原因となる異常タンパク質の蓄積を防ぐことで、これらの発症に対して抑制的に働くことが明らかとなってきました。本研究は、これら病気の予防法や治療法の開発につながる可能性も秘めています。本研究は、戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)「代謝と機能制御」研究領域(研究総括:西島正弘)の研究テーマ「オートファジーにおける脂質膜組織化機構の解明(研究者:中戸川 仁、基礎生物学研究所 分子細胞生物学研究部門、助教)」の一環として、同研究所の大隅良典教授らのグループとの共同研究によって得られたものです。今回の研究成果は、米国科学雑誌「Cell(セル)」オンライン版にて207年7月13日に公開されました。