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2010年02月02日
栄養環境によるオートファジー制御の解明に成功

 基礎生物学研究所の鎌田芳彰助教、大隅良典教授(現東京工業大学)、神戸大の吉野健一助教、米澤一仁教授らの研究グループは、出芽酵母を用いて、細胞のリサイクルシステムであるオートファジーの「スイッチ」として機能するタンパク質の働きを明らかにしました。この成果は2010年1月27日発行の米国微生物学会誌Molecular and Cellular Biology誌に掲載されました。

[研究の背景]

 オートファジーは、細胞内成分を分解・再利用するリサイクルシステムです。しかし、必要以上の細胞内成分の分解は細胞に大きなダメージを与えるので、オートファジーは厳密に制御される必要があります。従って栄養豊富な環境では、オートファジーは抑制されています。一方、細胞が飢餓状態におちいると、オートファジーが誘導されます。オートファジーが起きると細胞内の不要な構造物が分解されるので、細胞はその分解物を再利用することにより、飢餓条件下でも生き延びることができます。

 近年、オートファジーに関連した遺伝子やタンパク質の働きは次々と明らかになってきましたが、どのようにして飢餓環境がオートファジーを誘導するかという点は、明らかになっていませんでした。

[研究の成果]

 今回研究グループは、オートファジーを誘導するスイッチ役のタンパク質を探す目的で、Atg13タンパク質に注目しました。なぜなら、Atg13タンパク質は、栄養環境の変動に伴ってリン酸化状態が変化するからです。Atg13タンパク質は栄養が豊富な条件ではリン酸化され、飢餓条件では脱リン酸化されます。そこで研究グループは、Atg13 タンパク質の脱リン酸化がオートファジーをオンにするスイッチではないかと仮説を立て研究を行いました。

 研究グループは、Atg13タンパク質のリン酸化部位を特定し、次にリン酸化が起こらない変異体Atg13タンパク質(脱リン酸化型変異体Atg13タンパク質)を作成しました。この脱リン酸化型変異体Atg13タンパク質を酵母細胞内に作らせると、栄養環境にかかわらずオートファジーが誘導されました。この結果より、Atg13タンパク質のリン酸化状態の変化が、オートファジー制御の「スイッチ」として機能しているとが証明されました。また、今回の成果は、豊富な栄養環境を保ちつつ酵母にオートファジーを誘導させることに成功した初め ての成果です。

 近年、オートファジーはリサイクルのみならず細胞内浄化機能も担い、ヒトのアルツハイマー病など変性タンパク質の細胞内蓄積・凝集を伴う病態の予防に役立っていることも明らかになっています。オートファジーの誘導に関する本研究の成果は、将来、それらの病態の予防・治療法に役立てられる可能性を秘めています。

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図1:オートファジー誘導メカニズムの模式図


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図2:出芽酵母のオートファジーの様子を電子顕微鏡で観察した像
脱リン酸化型変異体Atg13を酵母細胞内に作らせると、栄養状態にかかわらずオートファジーが誘導され、液胞内に小袋状の構造が多数観察される(右図)。リン酸化型Atg13を酵母細胞内に作らせてもオートファジーは誘導されない(左図)。


[発表雑誌]

米国微生物学会誌
Molecular and Cellular Biology
2010年1月27日掲載

論文タイトル:
"Tor directly controls the Atg1 kinase complex to regulate autophagy."

著者:Yoshiaki Kamada, Ken-ichi Yoshino, Chika Kondo, Tomoko Kawamata, Noriko Oshiro, Kazuyoshi Yonezawa, and Yoshinori Ohsumi

[研究グループ]

本研究は基礎生物学研究所の鎌田芳彰助教、大隅良典教授(現東京工業大学)、神戸大の吉野健一助教、米澤一仁教授(故人)らによる研究グループにより行われました。

[研究サポート]

本研究は、文部科学省科学研究費補助金のサポートを受けて実施されました。

[本件に関するお問い合わせ先]

基礎生物学研究所
助教:鎌田 芳彰 (カマダ ヨシアキ)
Tel: 0564-55-7536(研究室)
E-mail: yoshikam@nibb.ac.jp

[報道担当]

基礎生物学研究所 広報国際連携室
倉田 智子
Tel: 0564-55-7628
E-mail: press@nibb.ac.jp