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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

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プレスリリース概要

2023.02.10

細胞の変形・運動に複数のタンパク質が協調して関わる仕組みを数式で解明

複数の分子活性の経時変化を同時測定データとして統合化するデータ解析手法を開発
~がんや免疫、神経疾患など医学生物学研究への応用が期待~

奈良先端科学技術大学院大学
藤田医科大学
東京理科大学
自然科学研究機構 生命創成探究センター
自然科学研究機構 基礎生物学研究所

【概要】
奈良先端科学技術大学院大学(学長:塩﨑 一裕)データ駆動型サイエンス創造センターの作村 諭一教授(兼:先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 データ駆動型生物学研究室)は、同大 先端科学技術研究科 情報科学領域の池田 和司教授、藤田医科大学の国田 勝行講師、東京理科大学の中村 岳史教授、自然科学研究機構 生命創成探究センター/基礎生物学研究所の青木 一洋教授らと共同研究を行い、情報伝達の分子スイッチの役割を果たす3つのRhoファミリーGタンパク質(Rho GTPase)の活性度を細胞エッジ(周縁)の変形速度として定量的に変換する数式の導出に成功しました。Rho GTPaseのうちCdc42、Rac1、RhoAの3つが細胞の形態制御に必要であることは知られていましたが、それぞれの役割を分担しながら協調して細胞を変形するという動的な制御メカニズムは未解明でした。本研究は、ヒト線維肉腫由来のHT-1080細胞において、これら3種の分子が細胞変形を説明するのに十分な情報を持っていることを数値的に証明するとともに、細胞変形に対してこれらの分子がどのように協調しているのかを解明しました。本研究で開発された解析法は、がん細胞や免疫細胞、発達中の神経細胞などのデータに応用可能で、医学や生物学の発展に寄与することが期待されます。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」研究開発領域における研究開発課題「細胞-基質間の力を基盤とした細胞移動と神経回路形成機構の解明およびその破綻による病態の解明」(研究開発代表者:稲垣 直之)および日本学術振興会(JSPS)科学研究費による支援によって実施しました。

この研究成果は、2023年2月10日午前1時(日本標準時)付で、Cell Reportsオンライン版(doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112071)に掲載されます。
 
fig1.jpg (図)同時計測の問題を解決するデータ前処理法motion-triggered average(MTA)の概要。個別細胞で計測されたRho GTPase活性度を、同一の細胞の動きを基準に統合する。得られた活性度時系列は擬似的に同時計測したデータと見なせる。