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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

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プレスリリース概要

2022.02.28

祖先の背中の肥大化が昆虫の翅を生んだ ―150年来の昆虫翅進化の謎に迫る―

京都大学
徳島大学
自然科学研究機構 基礎生物学研究所

京都大学大学院農学研究科 大出高弘 助教、徳島大学バイオイノベーション研究所 三戸太郎 教授、基礎生物学研究所 新美輝幸 教授の共同研究グループは、フタホシコオロギの翅づくりの過程を調べることで、昆虫の翅進化の謎に迫りました。昆虫には、始祖鳥のような翅進化の中間段階を示す決定的な化石が見つかっておらず、翅の起源をめぐる議論は150年以上続いてきました。提唱されてきた仮説は背板起源説/側板起源説/複合起源説の3種類に収斂しますが、いずれの説も決め手を欠く状況です。本研究は、祖先的な発生様式を示すフタホシコオロギの翅づくりの過程を調べることで、この状況を打破することを目指しました。研究グループは、ゲノム編集や外科手術などの手法を駆使することによって、側板ではなく、背板の細胞がコオロギの翅づくりに主導的な役割を果たすことを明らかにしました。さらに、背板を爆発的に肥大化させる細胞の成長シグナルを特定することに成功しました。これらの成果は、祖先無翅昆虫の背中の縁が、成長シグナルの活性の変化によって肥大化することで翅が進化したという背板起源説に近い進化シナリオを支持します。

本成果は、2022年2月21日(現地時刻)に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

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