自然科学研究機構 基礎生物学研究所
国立大学法人 筑波大学
マメ科植物は、根に根粒と呼ばれる特殊な器官を形成することで、土壌中の窒素固定細菌と共生し、多くの植物が利用できない大気中の窒素を栄養源として利用することができます。これにより、窒素栄養が乏しい土壌でも盛んに生育することができます。一方で、宿主となるマメ科植物は根粒へ多量の光合成産物を供給する必要があるため、過剰な根粒の形成は宿主の生育を著しく阻害します。このことから、宿主植物は根粒の数を最適化する仕組みを持っていることが知られています。
基礎生物学研究所の大熊直生大学院生(総合研究大学院大学)、川口正代司教授、征矢野敬准教授と筑波大学の寿崎拓哉准教授らにより構成される研究グループは、マメ科のモデル植物ミヤコグサを用いて、葉で強く発現するマイクロRNA
(注遺伝子「
MIR2111-5」を特定し、葉で合成されたmiR2111が根で機能する根粒形成抑制因子TOO MUCH LOVE (TML)を阻害することで、根粒の数を全身的にコントロールしていることを明らかにしました。この成果は、2020年10月15日に英国の科学雑誌『
Nature Communications』に掲載されました。
図0: 「葉」で作られたmiR2111が「根」で根粒の数を増やす
接ぎ木を用いて、地上部でのみマイクロRNA遺伝子「
MIR2111-5」を過剰発現させmiR2111を過剰に蓄積させると、根の根粒の数が増加した。