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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2020.02.05

生殖細胞形成に関わる遺伝子の発現を選択的に抑制する仕組みを発見

精子や卵子といった生殖細胞を作る過程では、体細胞とは異なる遺伝子が働いています。生殖細胞の形成過程で特異的に発現する遺伝子が体細胞で誤って働いてしまうと、染色体分配異常や腫瘍形成が引き起こされることが知られています。生殖細胞で特異的に働く遺伝子群の発現を厳密に制御する仕組みに注目が集まっていますが、そこには不明な点が数多く残されていました。モデル生物である分裂酵母を用いたこれまでの研究から、生殖細胞形成に欠かせないプロセスである減数分裂に関わる遺伝子群が、転写のオンオフという制御に加えて、転写産物の時期特異的な分解制御によって発現調節されていることが分かっていました。しかし、減数分裂期特異的に働く遺伝子の転写産物のみを、選択的に分解する機構の詳細は明らかにされていませんでした。今回、基礎生物学研究所の七野悠一研究員(現 理化学研究所)、山本正幸名誉教授、核融合科学研究所 大坪瑶子特任助教、自然科学研究機構 新分野創成センター 山下朗特任准教授は、減数分裂特異的な遺伝子群の転写産物と結合する因子が、MTREC/NURSと呼ばれる複合体を介して、RNAを分解するタンパク質群と物理的に相互作用し、その結果、体細胞における減数分裂転写産物の選択的な除去が行われることを明らかにしました(図1)。本研究成果は2020年2月3日付でPlos Genetics誌に掲載されました。

fig1.jpg 図. MTREC/NURS複合体による減数分裂転写産物の選択的な分解誘導
体細胞分裂期の分裂酵母細胞では、減数分裂転写産物中の目印配列をRNA結合タンパク質Mmi1が認識し、Red1を含むMTREC/NURS複合体を介してRNA分解複合体エクソソームが呼び込まれ、選択的なRNA分解が誘導される。