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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2017.01.27

動物と植物に共通の幹細胞化誘導因子の発見

 動物も植物も、受精卵が分裂し、増えた細胞がいろいろな性質を持ち、特殊化(専門用語では分化)することで体ができあがります。一方、特殊化した細胞が受精卵のようにいろいろな性質の細胞を生み出せるように逆戻りすることもできます。ヒトを含む哺乳類では、できあがった細胞にいくつかの遺伝子を誘導することで、いろいろな性質を持った細胞を生み出すことのできる幹細胞(iPS細胞)に戻すことが可能であることがわかりました。一方、植物では、挿し木や葉挿しで見られるように、動物に較べ、簡単に、できあがった細胞を幹細胞に戻せることが知られていました。しかし、動物と植物はそれぞれ独立に進化してきたことから、それぞれ異なった仕組みで幹細胞が作られると考えられてきました。

 基礎生物学研究所/総合研究大学院大学の李琛(リ チェン)大学院生、玉田洋介助教、長谷部光泰教授、名古屋大学の佐藤良勝特任講師、金沢大学の西山智明助教らを中心とした研究グループは、コケ植物ヒメツリガネゴケの低温ショックドメインタンパク質(Cold Shock Domain Protein: CSP)遺伝子の進化を研究していたところ、予想外に、この遺伝子がヒメツリガネゴケの幹細胞化を誘導することを発見しました。さらに、哺乳類のiPS細胞誘導遺伝子の一つであるLin28と同じグループの遺伝子(専門用語では相同遺伝子)であることもわかりました。幹細胞化を誘導する、動物と植物に共通の遺伝子の始めての発見です。

 今後は、CSP遺伝子の機能を詳しく調べることによって、動物と植物の幹細胞形成の共通性と多様性が明らかになってくることが期待できます。また、どうして植物は動物よりも幹細胞化しやすいのかという、より根源的な疑問の解決にも寄与できるのではないかと考えています。

 本研究は基礎生物学研究所/総合研究大学院大学、名古屋大学、金沢大学、西バージニア大学、デューク大学、台湾中央研究院との国際共同研究チームによる成果です。

 本研究成果は2017年1月27日に国際学術誌“Nature Communications”(ネイチャー・コミュニケーションズ)に掲載されます。本研究はJST戦略的創造研究推進事業 ERATO、科学研究費補助金、頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラムなどの支援のもと行われました。

 

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