基礎生物学研究所
2011.07.15
我々の体液(血液、脳脊髄液等の細胞外液)の浸透圧は常に約300mOsm/kgに保たれています。この体液恒常性は生命維持のために必須であり、そのため我々の体は体液の浸透圧を監視する仕組みを備えています。脱水等により体液の浸透圧が上昇した場合には、口渇感を感じて飲水するとともに、脳下垂体から抗利尿ホルモン(バソプレッシン)が血中に放出され、腎臓において尿量を減少させる等の反応が出ることになります。TRPV1は、トウガラシの辛味成分(カプサイシン)や熱、酸などの浸害刺激に応答して開口するチャンネル分子として有名ですが、TRPV1遺伝子欠損マウスが体液浸透圧の制御において異常を示すことから、浸透圧センサー分子の候補であるとも言われていました。
今回、基礎生物学研究所・統合神経生物学研究部門の野田昌晴教授らは、TRPV1チャンネルを発現する細胞株を用いて、TRPV1が体温付近の温度で浸透圧感受性を示すことを確認すると共に、その応答がカプサイシンや酸によっても相乗的に増強されることを見出しました。今回の成果は、我々の体が体液恒常性を維持する仕組みを明らかにする上で重要な手掛かりとなるものです。また、後述のように、糖尿病患者の多飲行動や、痛みの感知機構の理解にも役立つものです。研究の詳細は米国の科学雑誌プロスワン(PLoS ONE)誌において発表されます。
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