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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2013.12.19

霊長類大脳皮質領野で特定の遺伝子のON/OFFが調節される仕組みの解明

 大脳皮質は、ほ乳類の高次脳機能に中心的役割を担うものであり、霊長類、特にヒトで良く発達し、脳全体を覆うに至ります。大脳皮質はその場所によって異なる機能を持つことが知られており、それぞれ連合野、運動野、視覚野などの「領野」として区別されています。領野ごとの違いがどのように形成されるのかは、大変興味深いテーマですが、未だ多くの謎に包まれています。

 基礎生物学研究所の脳生物学研究部門では、これまでに霊長類を用いて、脳の領野によって異なる発現パターンを示す遺伝子を発見してきました。それらの遺伝子は、例えば、連合野で発現し(ONになり)、視覚野では発現しない(OFFになる)、という発現の調節が行われていますが、領野の違いによって特定の遺伝子のONとOFFが調整される仕組みは、全く不明でした。

 今回、畑克介研究員と山森哲雄教授らは、マカクザルの連合野ではONになり、視覚野ではOFFになる遺伝子の領野特異的な発現調節の仕組みの一端を明らかにしました。連合野特異的にONになる遺伝子のグループは、遺伝子発現を調節するプロモーター領域が高い割合でメチル化されていること、および、メチル化DNA結合タンパク質の一つとして知られるMBD4が連合野特異的に存在していることがわかりました。また、メチル化されたプロモーター領域にMBD4が結合することで、連合野特異的に遺伝子がONになることも明らかとなりました。これは霊長類の脳において、領野特異的な遺伝子のON/OFFの調節機構が明らかとなった初めての例です。

 高度な認知機能を司る霊長類連合野に特異的に発現する遺伝子の発現機構はこれまで全く判っておらず、今回の成果は、今後の霊長類の大脳皮質の発達に関する研究と精神疾患の病因解明や治療等の研究につながる可能性が期待されます。この成果は、米国神経科学会誌Journal of Neuroscience(ジャーナルオブニューロサイエンス)2013年12月11日号にて発表され、「This Week in The Journal」として紹介されました。

 

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図:領野差遺伝子プロモーターのメチル化(メチル化の割合を●高〜○無で示している)

連合野遺伝子のプロモーターは強くメチル化されているが、視覚野遺伝子のプロモーターはあまりメチル化されていない。