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2014年10月10日
「幻のアサガオ」といわれる黄色いアサガオを再現

自然科学研究機構 基礎生物学研究所

サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社

 

 

「幻のアサガオ」といわれる黄色いアサガオを再現

 

基礎生物学研究所の星野敦助教らは、鹿児島大学、サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社と共同で、キンギョソウ由来の遺伝子をアサガオで機能させることにより、幻といわれる「黄色いアサガオ」を咲かせることに成功しました。

 

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【研究の背景】

 アサガオの野生型(原種)は青い花を咲かせます。赤、桃、紫、茶、白といった多彩な色も、栽培が盛んになった江戸時代に現れました。しかし、バラに青色がないように、アサガオには黄色がありません。江戸時代の図譜には菜の花のように黄色いアサガオが記録されていますが、現在では失われてしまっているため、「幻のアサガオ」と呼ばれています(図1)。この「幻のアサガオ」は、東野圭吾さんの「夢幻花」や、梶よう子さんの「一朝の夢」という小説の中にも登場します。

 一般的に黄色い花には、カロテノイドやオーロンといった黄色い色素が含まれていますが、これらを大量に含んだアサガオはありません。アサガオは花色の決まる仕組みについて最も研究が進んだ植物の一つです。その科学的知見を生かして、花色の発色機構を理解するための基礎研究として、研究グループは幻の黄色いアサガオの再現に取り組みました。

 

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図1 江戸時代の図譜に描かれた黄色いアサガオ

文化14年 (1817)に出版された「あさかほ叢」(左)、嘉永6年(1853)の「朝顔花併」(右)より(国立国会図書館デジタルコレクションより転載)

 

【研究の成果】

 研究グループは、黄色いキンギョソウの花の中で黄色の色素がつくられる仕組みを、アサガオの中に導入することを目指しました。黄色い花を咲かせるキンギョソウでは、カルコンという色素から、カルコン配糖化酵素遺伝子とオーロン合成遺伝子の2つの遺伝子の働きによってオーロンを合成していることがわかっています。一方、アサガオでは、カルコンはつくられていますが、オーロンを大量につくる仕組みがありません。

 黄色いアサガオの作出の元となるアサガオには、54Y系統というクリーム色の花を咲かせるアサガオを使いました。54Y系統では花の色素を合成する過程のうち、カルコン異性化酵素遺伝子が機能しないために原種の青い色素が蓄積せず、代わりにカルコン(とくに糖が結合したカルコン)が蓄積することを、研究グループは突き止めていました。この系統の花には、花弁がきれいに開かずに縮みやすいという特徴もあります。

 

 研究グループはこの54Y系統に、キンギョソウ由来のカルコン配糖化酵素遺伝子とオーロン合成遺伝子の2つの遺伝子を導入しました。すると、遺伝子を導入した複数のアサガオで黄色い花が咲きました。色素を調べると、カルコンが少なくなる代わりに、キンギョソウとおなじ構造のオーロンがアサガオの花弁中で合成されて蓄積していることが確認できました。また、54Y系統で見られた花弁の縮みが改善し、きれいに咲く花が多くなりました。

 

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図2 今回作出した黄色いアサガオの花(左)と、元になった54Y系統のクリーム色のアサガオの花(右)

 

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図3 花に含まれる色素の合成経路

 

【今後の展望】

 今回作出した黄色いアサガオと、元の54Y系統を詳しく比較することで、花の細胞が色素の合成と蓄積を調節して発色する仕組みや、花が縮むという54Y系統の特徴と色素の関係などが明らかになると期待されます。

 

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【参考情報】

本件についての論文発表や学会発表は、今後行われる予定です。

 

【本研究に関するお問い合わせ】

基礎生物学研究所 多様性生物学研究室

助教:星野 敦(ホシノ アツシ)

TEL: 0564-55-7534

E-mail: hoshino@nibb.ac.jp

 

サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社

上席研究員:田中 良和(タナカ ヨシカズ)

TEL: 075-962-2204

E-mail: Yoshikazu_Tanaka@suntory.co.jp

 

【報道担当】

基礎生物学研究所 広報室

TEL: 0564-55-7628

FAX: 0564-55-7597

E-mail: press@nibb.ac.jp

 

 

 

黄色いアサガオと、元になったクリーム色のアサガオとの比較