基礎生物学研究所
2014.09.26
クヌギカメムシの共生細菌入り卵塊ゼリーの機能を解明
- 真冬の雑木林で育つ幼虫の秘密 -
独立行政法人 産業技術総合研究所
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所
■ ポイント ■
■ 概 要 ■
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)生物プロセス研究部門【研究部門長 田村 具博】深津 武馬 首席研究員(兼)生物共生進化機構研究グループ 研究グループ長、貝和 菜穂美 産総研技術研修員、細川 貴弘 元 産総研特別研究員(現 九州大学助教)らと、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 基礎生物学研究所【所長 山本 正幸】(以下「基生研」という)重信 秀治 准教授らは共同で、放送大学、国立大学法人 東京大学と協力して、クヌギカメムシ類に見られる特異な卵塊ゼリーの産生機構、化学成分、生理機能、適応的意義を明らかにした。
クヌギカメムシ類は日本を含むアジア地域に分布し、晩秋にクヌギなどの樹幹にゼリー状物質に覆われた卵塊を産みつける。幼虫は厳冬期に孵化してゼリーのみを餌として成長し、早春から植物の汁を吸いはじめる。ガラクタンという多糖類からなるゼリーには、孵化した幼虫が3令まで成長するのに必要な栄養分と、春からの植物の汁を餌とする生活に必須な共生細菌が含まれており、クヌギカメムシ類の特異な生態を支えていることがわかった。寒天、カラギーナン、ペクチンなど多量のガラクタンの産生は藻類や植物では知られているが、動物では例外的であり、その生物機能を解明したことは基礎的にも応用的にも興味深い。
この研究成果は2014年9月26日1時(日本時間)に米国の学術誌「Current Biology」(カレントバイオロジー)にオンライン掲載される。
本研究の一部は、基礎生物学研究所次世代シーケンサー共同利用研究の課題として実施され、生物機能解析センターの前田太郎研究員と重信秀治特任准教授らが、共生細菌の全ゲノム解読を担当しました。
ゼリー状物質で覆われた卵塊を産むクヌギカメムシ雌成虫