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2014年02月13日
オジギソウの遺伝子操作に成功 〜植物の運動の仕組み解明への鍵技術の開発〜

 植物はほとんど動きませんが、オジギソウは例外で、さわるとほんの数秒のうちに葉がお辞儀をしたように閉じてしまいます。お辞儀運動の仕組みや、お辞儀運動がどのように進化したのかを調べるためには、動きに関係した遺伝子を調べる必要があります。しかし、これまでオジギソウの遺伝子を操作することはできませんでした。基礎生物学研究所の真野弘明研究員、長谷部光泰教授らの研究グループは、技術改良の結果、オジギソウの遺伝子操作に世界で初めて成功しました。この成果は、日本時間2月13日に科学雑誌PLOS ONEに掲載されました。

 

【研究の背景】

 オジギソウは、触れると数秒以内に葉を閉じる“お辞儀運動”をします(図1)。オジギソウの運動は、これまでにもダーウィンを含む多くの人々によって研究されてきました。しかし、オジギソウが触られたことをどのように感じ、お辞儀運動を起こすのか、あるいは、どんな遺伝子が進化することでお辞儀運動ができるようになったのか、何のためにお辞儀運動をするのか、など、多くの問題が解けていません。このような問題を解決するには、オジギソウの遺伝子を操作して運動に影響を与えるような遺伝子を探すことが必要です。オジギソウの属するマメ科は遺伝子操作(遺伝子組換え)が難しいことで知られており、オジギソウでもこれまで遺伝子操作ができませんでした。

 

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図1.オジギソウのお辞儀運動

 

【研究の成果】

 今回、真野研究員らは、オジギソウにオワンクラゲ由来の蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)の遺伝子を導入した“光る”オジギソウを作り出すことに成功し、オジギソウにおける遺伝子操作技術を確立しました。

 

【本研究の意義と今後の展開】

 本研究の成果は、オジギソウにおいてこれまで不可能であった遺伝子操作(遺伝子導入:遺伝子組換えの方法の一つ)を可能にしたことです。この技術を利用すれば、オジギソウの体内でいろいろな遺伝子を働かせたり、働かなくしたりすることが可能になり、お辞儀運度の仕組みと進化を明らかにできると考えられます。また、本研究で確立された遺伝子操作の方法は、他の植物への応用が可能であり、オジギソウ同様に遺伝子の操作が困難とされている作物を含む多くの植物に対しても、技術的な突破口を与えると期待されます。

 

【研究の成果の詳細】

 遺伝子導入植物の作製は、1)植物細胞への遺伝子の導入、および2)遺伝子が導入された細胞からの植物体の再形成、の2つのプロセスに分けることができます。真野研究員は、子葉の付け根にあたる“子葉節”という部分(図2)を出発材料として用いることにより、2)の植物体の再形成が高い効率で起こることを発見しました。1)の遺伝子導入に関しては、植物の遺伝子研究で一般的に用いられる、“アグロバクテリウム”という細菌の力を借りる方法を用いました。しかし、オジギソウの子葉節の細胞においては、アグロバクテリウムによる遺伝子導入が非常に起こりにくかったため、この効率を上げるべく様々な条件を検討しました。その結果、植物の組織とアグロバクテリウムを一緒に培養する際に培地のpHを安定化させることが、遺伝子導入の効率を大きく上昇させることを見出しました。こうした一連の工夫により、全身の細胞で遺伝子を操作することが可能になりました(図3)。

 

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図2.子葉節

 

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図3.遺伝子導入オジギソウの作製の流れ

 

【掲載誌情報】

PLOS ONE(プロスワン)

米国東部時間2014年2月12日(日本時間13日)掲載

論文タイトル: “Development of an Agrobacterium-mediated stable transformation method for the sensitive plant Mimosa pudica

著者: Hiroaki Mano, Tomomi Fujii, Naomi Sumikawa, Yuji Hiwatashi, Mitsuyasu Hasebe

 

【研究サポート】

本研究は、基礎生物学研究所生物環境応答戦略研究プロジェクト、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費)萌芽的研究、新学術領域研究「複合適応形質進化」などによる支援のもと行われました。

 

【本研究に関するお問い合わせ先】

基礎生物学研究所 生物進化研究部門

教授 長谷部 光泰(ハセベ ミツヤス)

TEL: 0564-55-7546

E-mail: mhasebe@nibb.ac.jp

 

【報道担当】

基礎生物学研究所 広報室

TEL: 0564-55-7628

FAX: 0564-55-7597

E-mail: press@nibb.ac.jp