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2013年12月12日
メダカにオスの二次性徴が発現するメカニズムを解明

自然科学研究機構 基礎生物学研究所

国立大学法人 総合研究大学院大学

 

男性ホルモン(アンドロゲン)は、生殖器官およびその附属器官にオス特有の形質発現(二次性徴)を誘導します。これらの形質は、オスが交配相手を得るために必要な形質です。しかし、アンドロゲンにより、どのような遺伝子が二次性徴発現に関わっているのか、そのメカニズムの詳細はよくわかっていませんでした。今回、岡崎統合バイオサイエンスセンター・基礎生物学研究所・分子環境生物学研究部門/総合研究大学院大学の荻野由紀子助教と井口泰泉教授の研究グループは、東京工業大学、和歌山県立医科大学、フロリダ大学、国立環境研究所との共同研究により、メダカのオス尻鰭の乳頭状突起形成をモデルとして、アンドロゲンが発現制御している遺伝子を発見し、アンドロゲンが二次性徴発現を制御する具体的な仕組みを明らかにしました。この研究成果は内分泌学専門誌Endocrinologyに掲載されます。

 

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図1:オスのメダカの尻鰭に形成される乳頭状突起(二次性徴)

 

【研究の背景】

 脊椎動物では、アンドロゲンにより、オスの生殖器や外部形態における二次性徴の発現が制御されています。アンドロゲンが十分に作用しないと、遺伝的にはオスであっても、不完全なオスあるいはメスとしての表現型を示すようになってしまいます。また遺伝的なメスでも過剰なアンドロゲンに暴露されるとオスの表現型を示すようになります(図2)。アンドロゲンはオスとしての生殖機能の確立や、メスがオスを選ぶ際に指標となる外部形態の発現に必須のホルモンです。アンドロゲンの作用は、アンドロゲン受容体(AR)を介した下流応答遺伝子の発現制御を介して発揮されます。メダカでは、アンドロゲンにより尻鰭にオスの二次性徴として乳頭状突起が形成されます。そのため環境水中のアンドロゲン様物質、あるいは抗アンドロゲン作用を示す物質のバイオモニタリングに利用されています。しかし、アンドロゲンによる乳頭状突起形成の分子機構は明らかにされていませんでした。

 

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図2:アンドロゲンを投与すると、メスにもオスの二次性徴としての乳頭状突起が形成される

 

 

【研究の成果】

 研究グループは、アンドロゲンを投与することで、メダカのメスの尻鰭に乳頭状突起が形成される時に、増殖因子のBmp7 (Bone morphogenic protein 7)と Wnt/βカテニンシグナルの転写因子のLef1 (Lymphoid enhancer-binding factor-1)という2つのタンパク質が作用していることを発見しました。さらに、Bmpシグナルの阻害剤を投与することにより、Lef1の発現が減少し、乳頭状突起形成に先立つ間葉細胞の増殖や骨芽細胞の分化が抑制され、乳頭状突起形成が阻害されることを見出しました。よって、アンドロゲンによるBmpシグナルの活性化、続いてWnt/βカテニンシグナルの活性化が、二次性徴としての乳頭状突起形成に必須であることが明らかとなりました。BmpやWnt/βカテニンシグナルは、ほ乳類のオスとしての外部形態及び生殖器形成などでも重要な役割を果たす因子です。これらの因子がアンドロゲンの影響を受けることが、メダカを用いた研究から明らかとなりました。

 

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図3:乳頭状突起形成の分子機構

 

【本研究の意義と今後の展開】

 自然環境中には人間の生活とともに放出された人工的な化学物質が数多く存在します。これらの化学物質の中には、生物の体内に取り込まれて性ホルモン様作用あるいは抗性ホルモン様作用を示し、「環境ホルモン」などと呼ばれることものもあります。環境指標動物であるメダカでは、従来の暴露試験では表現型として尻鰭の乳頭状突起の形成を指標とする長期的なモニタリングが必要で、より短期間で環境ホルモン作用を示す化学物質の有無を判断できる試験系の開発が求められてきました。今回のアンドロゲンによって発現が増加する遺伝子の発見は、環境水中のアンドロゲン作用を示す物質を素早く見つけ出す試験法開発への応用につながると期待されています。

 

【掲載誌情報】

Endocrinology(エンドクリノロジー)掲載予定(電子速報版11月18日公開)

論文タイトル: “Bmp7 and Lef1 are the downstream effectors of androgen signaling in androgen-induced sex characteristics development in medaka

著者: 荻野 由紀子、平川 育美、猪早 敬二、角谷 絵里、宮川 信一、ナンシー デンスロー、

山田 源、鑪迫 典久、井口 泰泉

 

【研究サポート】

本研究は、文部科学省科学研究費助成事業、環境省基盤研究、環境省日英共同研究、総合研究大学院大学学融合推進センター 学融合研究事業 女性研究者支援、熊本大学発生医学研究所共同研究のサポートを受けて行われました。

 

【本研究に関するお問い合わせ先】

岡崎統合バイオサイエンスセンター・基礎生物学研究所

総合研究大学院大学 生命科学研究科 基礎生物学専攻

分子環境生物学研究部門

教授 井口 泰泉(イグチ タイセン)

TEL: 0564-59-5235(研究室)

E-mail: taisen@nibb.ac.jp

 

【報道担当】

基礎生物学研究所 広報室

TEL: 0564-55-7628

FAX: 0564-55-7597

E-mail: press@nibb.ac.jp