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2009年04月10日
長いDNAをコンパクトに収納する ~染色体凝縮の謎にメス~

基礎生物学研究所 ゲノム動態研究部門の定塚勝樹助教と堀内嵩教授は、細胞の核の中のDNAをコンパクトに収納する” 染色体凝縮“と呼ばれる現象において、凝縮に必要な蛋白質複合体(コンデンシン)が染色体DNAに結合するメカニズムを明らかにしました。研究グループはDNAと蛋白質複合体の結合に不可欠なDNA配列を明らかにすると共に、リクルーターと呼ばれる蛋白質の役割を明らかにしました。これにより、染色体が形作られる仕組みの完全理解に向けて大きく前進しました。この成果は、2009年4月10日発行の米国の科学雑誌「Molecular Cell」に掲載されました。

[研究の背景]

一つ一つの細胞は顕微鏡でなければ見えないほど小さい。そのまた中にある核の中に、細胞が生きていくために必要な遺伝情報を記録したDNAが入っている。ヒトの場合46本の染色体上に記録され、DNA鎖全体の長さすると、2メートルにも及ぶ。このとてつもなく長いDNAを、どのように折りたたんで核の中に入れるのだろう? この驚異的とも思われる収納作業の仕組みは実はほとんど解っていない。近年、コンデンシンと呼ばれる複数の蛋白質からなる巨大な複合体が中心となり行っているらしいことがわかってきた。コンデンスミルク(濃縮ミルク)という言葉からも判るように、コンデンスとは濃縮、あるいは凝縮という意味を持ち、まさしく長いDNAを凝縮して太く短い染色体を形作るために必要であることから名付けられた。酵母からヒトに至るまでどんな生物でも持っており、それが無ければ生きていくことが出来ない重要な蛋白質だ。にもかかわらず、DNAに対してどのように作用して(どこに結合するのか)、どんなふうに働き、凝縮するのか?全く解っておらず、凝縮した染色体の内部でDNAがどのように折りたたまれているのかは謎のベールに包まれている(図1)。

090410fig1.jpg図1: 2本鎖DNAが折りたたまれて凝縮した染色体を構築するモデル
2重らせん構造のDNAは核の中で、ヒストンと呼ばれる塩基性蛋白質からなる複合体に巻き付き、ヌクレオソームと呼ばれる直径約10nmの構造を形成する。これが、リンカー(ヌクレオソーム同士をつなぐ役割を持つ)によってさらに密に束ねられ、直径約30nmのファイバーが形成されると考えられているが、この点に関して、近年異論も出されている。さらにそれより高次の構造がどのようになり、太く短い凝縮した染色体に組み建てられるのかは全くの謎だ。コンデンシンが、凝縮した染色体軸状に骨格構造を形成している様子が顕微鏡で観られていることから、コンデンシンを軸として30nmファイバーが折りたたまれているのではないかと考えられている。

[研究の成果]

研究グループは、酵母をモデルとして、RFBと呼ばれる短い配列(リボソームRNA遺伝子が多数繰り返している領域内にある特定の配列)を染色体の任意の場所に挿入すると、そこにコンデンシンが結合することを発見した。さらにそこに結合するには、コンデンシンを呼び込む“リクルーター”として働く4つの蛋白質が必要であることをつきとめた。まず、DNA配列を認識して最初の蛋白質がそこに付き、その後順次3つのリクルーターが次々に蛋白質同士接触することによりその場所に付いていき、最後にコンデンシンと接触することにより、その場所に呼び入れることがわかった(図2)。コンデンシンを染色体DNAへと呼び込むために必要かつ十分な役割を果たす特定の配列があること、そしてその結合メカニズムが初めて解った。

今後、この配列を、染色体上の任意の場所に挿入し、リクルーター蛋白質をコントロールして、人為的に染色体の好きな場所にコンデンシンを付けることが出来るようになった。定塚勝樹助教は「この系を利用すれば、コンデンシンがDNAをどのように折りたたみ、束ねていくのか?分子レベルでの解析が可能になる」と語っている。

090410fig2.jpg図2: コンデンシンを染色体へと呼び込む特定の配列と、その結合メカニズム
コンデンシンを染色体DNAに呼び込むために必要かつ十分な役割を果たすRFBと呼ばれる配列を酵母で発見した。研究グループは、同じ遺伝子が非常に多く(~200 コピー)繰り返している領域に注目した。この繰り返し領域では、1つ1つのコピーが各々RFB配列を持つため、周期的にこの配列が並ぶ。コンデンシンのリクルーター蛋白質が1つでもなくなると、この繰り返し領域の凝縮がうまくおこらない。コンデンシンがRFB に結合することで各々のコピーを規則的に折りたたんでいる可能性が考えられる。

[発表雑誌]

Molecular Cell (モレキュラー セル) (2009年4月10日号)

論文タイトル:
"The cis Element and Factors Required for Condensin Recruitment to Chromosomes"

著者:Katsuki Johzuka and Takashi Horiuchi
(定塚勝樹、堀内嵩)

[研究サポート]

本研究は文部科学省科学研究費補助金のサポートを受けて実施されました。

[本件に関するお問い合わせ先]

基礎生物学研究所 ゲノム動態研究部門
助教: 定塚 勝樹(ジョウヅカ カツキ)

Tel: 0564-55-7692(研究室)
E-mail: kjozuka@nibb.ac.jp
URL: http://www.nibb.ac.jp/gene2/

[報道担当]

基礎生物学研究所 連携・広報企画運営戦略室
倉田 智子
Tel: 0564-55-7628
E-mail: press@nibb.ac.jp