English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

  • Home
  • ニュース
  • > ヘテロクロマチンタンパク質による液-液相分離機構を解明

ニュース

プレスリリース概要

2025.03.24

ヘテロクロマチンタンパク質による液-液相分離機構を解明

横浜市立大学
京都大学
東京大学
自然科学研究機構 基礎生物学研究所

横浜市立大学大学院生命医科学研究科の西村 善文名誉教授(特任教授)、古川 亜矢子客員研究員(現京都大学大学院農学研究科准教授)、理化学研究所放射光科学研究センターの清水 伸隆グループディレクター(研究当時:高エネルギー加速器研究機構教授)、東京大学大学院農学生命科学研究科の寺田 透教授、高エネルギー加速器研究機構の千田 俊哉教授、基礎生物学研究所の中山 潤一教授らのグループは、ヘテロクロマチンタンパク質HP1αによる液-液相分離の分子機構を解明しました。液-液相分離とは自発的に液滴を形成する現象で細胞内のさまざまな顆粒形成に関与するとされ、核内では濃縮し遺伝子の発現が抑えられた状態のヘテロクロマチン形成にも関与すると考えられています。HP1αの構造はN末テイル・クロモドメイン・ヒンジ領域・クロモシャドードメインから成りますが、リン酸化N末テイルとクロモドメインの末端にある特異的な塩基性領域がお互いに結合した動的な2量体構造が中間体となり液-液相分離がおこっていることを解明しました(図1)。さらにこの特異的な塩基性領域が変異した細胞ではヘテロクロマチンの大きさが変化し、HP1αの液-液相分離とヘテロクロマチン形成が関連することを解明しました。

本研究成果は、Oxford University Pressが発行する「Nucleic Acids Research」に掲載されます(日本時間2025年3月24日9時1分)。

研究成果のポイント
  • ヘテロクロマチンタンパク質HP1αのN末リン酸化は液-液相分離を引き起こす。
  • HP1αの特定の塩基性領域とリン酸化N末との結合が液-液相分離の中間体である。
  • HP1αの液-液相分離変異体は細胞核内のヘテロクロマチン形成に影響する。

fig1.jpg 図 a 低濃度ではリン酸化Nテイル(pS)と7番目の塩基性領域(b7)との相互作用がある。b 少し濃度が濃くなると分子間相互作用によりリン酸化Nテイル(pS)とクロモドメイン中の4番目の塩基性領域(b4)が結合し2量体を形成する。c 濃度がさらに濃くなるとこの2量体構造がさらに会合して液-液相分離を引き起こす。