金沢大学
基礎生物学研究所
金沢大学理工研究域生命理工学系の小藤累美子助教、自然科学研究科生命科学専攻博士前期課程の馬川直之(研究当時)ら、基礎生物学研究所の堀内雄太特別協力研究員(研究当時:総合研究大学院大学生命科学研究科基礎生物学専攻博士課程)、石川雅樹助教、長谷部光泰教授らの共同研究グループは、
植物が陸上へ進出する鍵となった、生殖細胞を保護する器官が、バクテリア由来の遺伝子によって作られていることを発見しました。
植物は、動物と同じように精子と卵を作って生殖します。現在、陸上は植物で覆われていますが、約5億年前には、植物は海や湖などの水中でしか生きられませんでした。植物の陸上進出を可能にしたのは、体の中に水を行き渡らせる器官(葉脈などの水通導器官)と、卵や精子を乾燥から保護する器官の進化だったと考えられてきました。しかし、どのような遺伝子の変化によってこれらの器官が進化したのかは分かっていませんでした。本研究グループは、一昨年、GRAS転写因子(※1)と呼ばれるバクテリア由来の遺伝子が、水通導器官の形成を担っていることを発表しました(石川ら 2023 米国科学アカデミー紀要)。さらに研究を進めた結果、今回、卵や精子を保護する器官も同じ遺伝子によって作られることを発見しました。この結果、植物の陸上化に必要だった三つの主要な器官が、すべてバクテリア由来の遺伝子によって進化したことが明らかになりました。
本研究の知見は、
植物の陸上化のような、生物の大きな進化には、異なった生物からの遺伝子の移入が重要な役割を果たし得ることを示しています。このことは、遺伝子が少しずつ変化して進化が進むという、従来の進化メカニズムに新たな視点を加えるものです。
本研究成果は、2024 年 12 月 31 日に英国国際学術誌 『
New Phytologist』のオンライン先行版に掲載されました。