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プレスリリース概要

2023.11.27

植物種子において特定のタンパク質を大量に蓄積する仕組みの発見

自然科学研究機構 基礎生物学研究所

近年、タンパク質は人間や家畜の栄養源としてだけでなく工業用の酵素やバイオ医薬品として利用が進んでおり、これらの有用タンパク質を大量に合成する方法が模索されています。現在、工業用酵素やバイオ医薬品は微生物や培養細胞を用いて生産されていますが、病原体の混入や生産コストの高さなどが問題となっています。植物による生産は、これらの問題点を克服する有効な手段であると考えられています。

ダイズを始めとした植物の種子は大量のタンパク質を蓄積することが知られていますが、蓄積するタンパク質の種類が少ないことが特徴です。植物は体内で数万種類のタンパク質を作りますが、種子に蓄積するタンパク質は種子貯蔵タンパク質と呼ばれる数種類であり、これら数種類のタンパク質が種子に含まれる全タンパク質の90%以上を占めます。このように、種子には特定のタンパク質だけを大量に蓄積する仕組みがあるものの、その詳細はまだ明らかになっていませんでした。

今回、基礎生物学研究所の金井雅武特任助教、真野昌二准教授らを中心とする共同研究グループはモデル植物シロイヌナズナを用いて、種子貯蔵タンパク質の遺伝子の末端に、大量蓄積するために不可欠な配列が存在することを明らかにしました。この配列を通常ならば種子に蓄積しないタンパク質の遺伝子に付加することで、そのタンパク質が種子に大量蓄積することを示しました。さらに、この方法を使用して、バイオ医薬品候補の1つであるインターフェロンを大量合成・蓄積させることに成功しました。

今後、この仕組みを活用して様々な有用タンパク質やバイオ医薬品を植物の種子で生産する方法が発展することが期待されます。

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図 植物種子細胞の電子顕微鏡写真
植物種子の細胞は物質を貯蔵するための細胞小器官(貯蔵オルガネラ)が発達しており、細胞体積の大部分を貯蔵オルガネラが占める。この写真はモデル植物のシロイヌナズナの種子細胞であり、細胞の中心に見える白色の斑点がある灰色の大きな球体がタンパク質を貯蔵する細胞小器官であるプロテインボディ(PB)、隙間を埋めるように存在する斑点のない灰色の小さな球体が油を貯蔵するオイルボディ(OB)である。