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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2020.10.02

目の水晶体(レンズ)形成におけるタンパク質合成制御の仕組みを発見

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
自然科学研究機構 生命創成探究センター
理化学研究所

目の水晶体(レンズ)が形成される過程では、まずレンズ線維細胞が分裂して増殖します。その後増殖が停止し、細胞が圧縮されると共にレンズ特有のタンパク質であるクリスタリンなどが合成されることによって、透明なレンズ核が形成されます。このようなレンズの分化の際に一過的に増加するタンパク質合成(「翻訳」)制御因子として、RNG140 (caprin2) が知られています。RNG140を欠損したマウスでは、実際にレンズ核の形成不全が起こることが報告されています。しかし、RNG140がどのようにレンズ核形成に関与するのかは不明でした。

基礎生物学研究所/生命創成探究センターの中沢香織大学院生(総合研究大学院大学)、椎名伸之准教授らの研究グループは、理化学研究所開拓研究本部(七野悠一基礎科学特別研究員、岩崎信太郎主任研究員)の研究グループと共同で、RNG140が翻訳を抑制する仕組みを明らかにしました。レンズ分化の際にクリスタリンなどの翻訳が抑制されると分化に不具合が生じてしまいます。しかし、RNG140はそれらレンズ分化に関わる翻訳は抑制せずに、逆に細胞増殖の促進に関わる翻訳を抑制するという巧妙な選択性を持つことがわかりました。この仕組みにより、RNG140はレンズ線維細胞の増殖を低下させて分化に向かわせるスイッチの役割を担っていると考えられました。

これらの成果は、2020年10月23日に米国の学術誌Journal of Biological Chemistry誌に掲載される予定で、掲載に先立ってオンライン公開されました。

fig1.jpg図1:目のレンズ分化におけるRNG140による選択的なタンパク質合成(翻訳)の抑制