English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

  • Home
  • ニュース
  • > セントロメア領域の組換え制御を発見 ~染色体異常を防ぐメカニズムの解明につながる成果~

ニュース

プレスリリース概要

2017.08.30

セントロメア領域の組換え制御を発見 ~染色体異常を防ぐメカニズムの解明につながる成果~

大阪大学

基礎生物学研究所

 

【研究成果のポイント】

◇ 比較的シンプルなセントロメア領域を持つ分裂酵母を用いてDNA組換え様式を詳細に解析することで、セントロメア領域でのDNA組換えが厳密に制御されていることを世界で初めて発見。

◇ ヒトのセントロメアにはリピート配列が数万コピーも存在するため、これまでDNA組換えの解析が困難だった。

◇ 染色体異常を防ぐメカニズムの解明、また、ゲノム編集技術や遺伝子治療への応用に期待。

 

【概要】

 大阪大学大学院理学研究科の中川拓郎准教授、Faria Zafar(ファリア・ザファー)大学院生、沖田暁子大学院生ら、及び自然科学研究機構基礎生物学研究所の中山潤一教授の研究グループは、染色体のセントロメア領域のDNA組換えが厳密に制御されていることを世界で初めて明らかにしました。

セントロメアは動原体の足場となる染色体領域であり、染色体分配が正確に起きるために重要です。ところが、リピート配列によって構成されているため、転座などの染色体異常が生じる脆弱領域でもあります。減数分裂期では、セントロメア領域でのDNA組換えが起きないよう制御されています。一方、体細胞(有糸)分裂期では、そのような組換え制御はないと考えられていました。

 

 本研究成果では、第1に、染色体腕ではRad51依存的組換えとRad51非依存的組換えの両方が起きるのに対して、セントロメアではRad51依存的組換えしか起きないことが明らかになりました。第2に、染色体腕に比べて、セントロメアでは交叉型組換えが少なく主に非交叉型組換えが起きることが分かりました。更に、こうしたセントロメア特異的な組換え制御が破綻するとセントロメア・リピートを介した染色体異常が高頻度で起こることが分かりました。

 

 本研究は、生物が染色体領域に応じてDNA組換えの様式を使い分けることを初めて明らかにしました。こうした組換え制御は、ゲノムの約50%をリピート配列が占めるヒトでは、より重要であると考えられます。

 本研究成果により、リピート配列を介して起きる染色体異常を抑制するメカニズムの解明、また、ゲノム編集技術や遺伝子治療への応用が期待されます。

 

 本研究成果は、英国科学誌「Nucleic Acids Research」(オンライン)に、8月30日(水)午前2時(日本時間)に公開されます。

 

fig1.jpg