基礎生物学研究所
2017.07.17
神経膠腫(グリオーマ)は、脳に存在しているグリア細胞という細胞に由来する腫瘍です。もっとも悪性なグリオーマはグリオブラストーマと呼ばれ、効果的な治療法の開発が待たれています。今回、基礎生物学研究所・統合神経生物学研究部門(藤川顕寛研究員、野田昌晴教授)は、アスビオファーマ株式会社との共同研究を通じて、グリオブラストーマが抗がん剤に耐性となる原因とされる「がん幹細胞性」の維持に、チロシンホスファターゼの1つPTPRZという酵素が関わることを明らかにしました。また、PTPRZに対してアロステリックな阻害作用を有する化合物を見出しました。本阻害剤は、がん幹細胞性の指標である細胞スフィアの形成を阻害すること、また動物実験において、本阻害剤と抗がん剤テモゾロミドを併用投与することによって、抗腫瘍効果が有意に増強されることを明らかにしました。
本研究の成果は、英国時間2017年7月17日にオンライン科学雑誌Scientific Reportsに掲載されます。
図1: Ptprzノックダウンによるスフィア形成の阻害
ラット由来C6及びヒト由来U251グリオブラストーマ細胞を、特殊な条件下で培養すると丸い細胞塊(スフィア)が形成される(がん幹細胞性の形態的指標の一つ)。Ptprzの発現をshRNAでノックダウンした細胞株では、スフィア形成能が大きく損なわれる。