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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2016.07.22

髄鞘形成に関わる新規分子機構の発見 〜コンドロイチン硫酸鎖の新たな役割〜

 基礎生物学研究所 統合神経生物学研究部門ではこれまで、タンパク質チロシンホスファターゼに属するPTPRZが脱髄疾患(多発性硬化症)や脳腫瘍(グリオーマ)に対する創薬ターゲットになることを報告してきました。コンドロイチン硫酸(CS)は、膜タンパクや分泌タンパク分子に結合して、プロテオグリカン(PG)と総称される糖タンパク質として生体内に存在しています。このコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は、慢性化した多発性硬化症の脱髄巣や脊髄損傷の損傷部位に蓄積し、髄鞘や神経繊維の再生の妨げになることが知られています。

 今回、同研究部門の久保山 和哉 研究員、藤川 顕寛 研究員、野田 昌晴 教授らは、髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトというグリア細胞の細胞分化を制御しているPTPRZという酵素の活性調節に、PTPRZに結合しているコンドロイチン硫酸鎖が関与していることを明らかにしました。PTPRZのコンドロイチン硫酸鎖は、PTPRZを活性化状態(単量体)に維持する働きをしており、PTPRZの抑制性リガンド分子であるプレイオトロフィンは、コンドロイチン硫酸鎖と結合することによって、その働きを抑制することが判りました。その結果、PTPRZは不活性化(2量体化)し、オリゴデンドロサイトの分化を促進するというメカニズムが明らかになりました。

 本成果は米国時間2016年7月21日に米国生化学・分子生物学会誌The Journal of Biological Chemistryに掲載されました。

 

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