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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2013.09.16

植物の成長に必要な糖タンパク質をつくりだす酵素を発見 -50年来の謎を解明-

 植物の細胞を取り囲む細胞壁中には、動物には存在しない特殊な糖鎖構造を持つ糖タンパク質が多数存在することが1960年代より知られていました。これらの糖タンパク質には、細胞壁形成時の足場や補強剤としての役割を果たすものや、細胞間で情報を伝えるホルモンとして機能するものなど、植物の成長に極めて重要な分子群が含まれます。これまでにこれらの糖タンパク質にはアラビノースという糖が鎖状に連なって付加していること、および、糖鎖が付加することによってはじめてタンパク質のかたちが正しく維持されることが明らかにされていましたが、アラビノースをタンパク質に付加させるのに必要な酵素は未だ見つかっていませんでした。

 今回、基礎生物学研究所(細胞間シグナル研究部門)の松林嘉克教授と大西真理研究員らは、シロイヌナズナの細胞に微量含まれるこの酵素を精製・同定することに世界で初めて成功しました。シロイヌナズナにはこの酵素をコードする遺伝子が3個ありましたが、遺伝子操作によりこれらが働かないようにした植物体では、細胞壁が薄くやわらかくなったり、受精が妨げられて種子ができなくなるなど、成長に様々な異常が生じることが分かりました。植物の成長における糖タンパク質群の重要性を直接的に示した初めての例です。これらの遺伝子の働きをうまく調節すれば、今後やわらかい食感の野菜や果物を作り出すなどの応用が可能になるかもしれません。

 この成果は、9月15日に米国科学誌Nature Chemical Biology電子版に掲載されました。

 

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松林嘉克教授と大西真理研究員