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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2011.07.08

生殖細胞の性別を決める遺伝子の発見

生物を構成する細胞は、体をつくる体細胞と、卵や精子を作りだし次世代に命をつなぐための特別な働きを持つ生殖細胞に大きく分けられます。基礎生物学研究所の小林悟教授と橋山一哉研究員らは、生殖細胞が将来卵になるか精子なるかの運命を分岐させる、最も始めのステップで働く遺伝子Sxlを発見しました。

多くの動物において、個体(体細胞)に性別があるように、生殖細胞にもオスとメスの区別があります。オスの生殖細胞は精子となり、メスの生殖細胞は卵になります。この違いはどのように生じるのでしょうか?これまで、生殖細胞が精子になるか卵になるかは、個体の性別に依存して決まるとされてきました。しかし、個体(体細胞)の性を決める遺伝子の欠損などにより個体が性転換しても、生殖細胞の性は変化せず不妊となる例がいくつも報告されてきました。このことは、これまでの定説とは異なり、生殖細胞が個体の性とは別に独自に性を決めていることを物語っています。
 

小林らはショウジョウバエを用いて、ごく初期の生殖細胞(始原生殖細胞)で働いている遺伝子をマイクロアレイという手法で調べました。そして、精子になるオスの生殖細胞と、卵になるメスの生殖細胞で働き方の異なる遺伝子を探しました。その結果、ショウジョウバエの体の形がつくられるごく初期の段階で、卵になるメスの生殖細胞で働いているが、精子になるオスの生殖細胞では働いていない遺伝子Sxl の存在を見つけました。卵になるメスの生殖細胞ではこの遺伝子のスイッチがオンになっていてSxl 蛋白質が作られて働いていますが、精子を作るオスの生殖細胞では遺伝子がオフになっておりSxl 蛋白質は作られていません。遺伝子の働き方を人工的に操作して、卵になるメスの生殖細胞でこの遺伝子の働きを抑えると卵を作れなくなりました。逆に、精子になるオスの生殖細胞でこの遺伝子を強制的にオンにすると、本来の性質とは異なり卵を作るようになりました(メス化)。本研究はショウジョウバエで行われましたが、今後、他の動物における生殖細胞の性(卵をつくるか、精子をつくるか)を決める機構を明らかにする上でも重要な第一歩となります。この成果は2011年7月8日に科学雑誌サイエンスの電子速報版で公開されました。

 

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小林悟教授(右)と橋山一哉研究員

 

 

研究者による研究成果解説映像