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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2011.05.06

シダゲノムの解読 ~陸上植物遺伝子の予想外の多様性を発見:遺伝子資源として有用~

 大学共同利用機関である基礎生物学研究所の長谷部光泰 教授、金沢大学学際科学実験センター遺伝子研究施設の西山智明 助教らは、国内5大学および国外9ヵ国による国際共同研究チームと共同で、シダ植物の一種であるイヌカタヒバのゲノム解読に成功しました。

 従来、陸上植物の中で最も複雑な形を持った被子植物と最も単純な形を持ったコケ植物のゲノムは解読されていました。しかし、両者の中間に位置するシダ植物はゲノムの大きさが大きく、ゲノム解読が難しかったことから、どのような遺伝子のどのような進化によって陸上植物が進化してきたのかは謎でした。
 今回、ゲノムの大きさが極めて小さいイヌカタヒバを用いることで、シダ植物のゲノム解読に初めて成功し、シダ植物とコケ植物、被子植物のゲノムを比較解析した結果、陸上植物が共通に持つ遺伝子が明らかになりました。また、花の咲く植物(被子植物)と花の咲かない植物(シダ植物)との間で、遺伝子の発現を制御する遺伝子(転写因子)の数が増えており、これが単純な形を持った植物から複雑な形を持った植物への進化を引き起こした可能性が高いことも分かりました。これまで、植物は動物と比べると互いに形が似ていることから、動物よりも遺伝子の進化の程度がずっと少ないだろうと思われてきましたが、今回の研究結果より、陸上植物のゲノムは動物よりも大きく変化していることが明らかになりました。さらに、病気や害虫に食べられないようにしたり花粉を運ぶ昆虫を引き寄せたりする働きを持つ二次代謝産物や植物の生育に必要な植物ホルモンの合成酵素遺伝子などは、被子植物・シダ植物・コケ植物でそれぞれ独自に数を増やしたり減らしたりして多様性を産み出していることも分かりました。
 今後、シダ植物やコケ植物特有の“有用な性質を産み出す遺伝子”を見つけ出し、作物などの改良に利用することによって、製薬やバイオマス生産を含む農林業への応用が進むものと期待されます。
 
 この成果は、2011年5月5日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Science」のオンライン速報版で公開されました。
 
長谷部教授による研究成果紹介