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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2007.02.20

メダカの性決定遺伝子はDMY遺伝子である

多くの生物には雄と雌の二つの性が存在します。性はどのようにして決まるのか、近年その仕組みを遺伝子レベルで解明する研究が盛んに行われています。ほ乳類では、SRY遺伝子の有無により性別が決まることが明らかになっています。一方、ほ乳類以外の脊椎動物の性決定遺伝子は精力的に探索されましたが長らく不明でした。基礎生物学研究所 松田勝研究員、長濱嘉孝教授らと新潟大学の酒泉満教授らの研究グループは2002年にメダカのY染色体から性決定遺伝子の有力な候補遺伝子を発見し、DMYと名付けました。DMY遺伝子はほ乳類の性決定遺伝子SRYとは全く構造の異なるタンパク質をコードする遺伝子です。DMY遺伝子突然変異体はメスになることから、DMYは正常発生において雄になるために必須の遺伝子であることが分かりました。しかしながらDMY遺伝子がメダカの性決定遺伝子であることを示すためには、DMY遺伝子が雄への分化に十分であることを示す必要がありました。本研究において松田らは、DMY遺伝子を遺伝的には雌のメダカ卵に導入し、雄になる個体を得ました。よって先の結果と合わせ、「DMY遺伝子は、メダカの雄への分化に必要かつ十分な遺伝子である。」という結論に達することができました。DMYは脊椎動物で見つかった2番目の性決定遺伝子となります。この研究により、メダカは、ほ乳類以外の脊椎動物において、特定の遺伝子の有無によって性別を判定できる唯一の動物という位置づけになりました。水生動物は環境変化の影響を直接に受けると考えられています。環境変化による生物の性別への影響を検証する為のモデルとして、メダカの果たす役割はより大きくなると期待されます。またメダカに関するゲノム情報の収集やバイオリソース事業が日本を中心として活発に展開されつつあることから、メダカは性研究の貴重なモデル生物として国内外の研究者からの注目がますます高まると予想されます。 本研究は基礎生物学研究所(松田勝・長濱嘉孝)と新潟大学(四宮愛・酒泉満)を中心とした研究グループにより実施されました。研究の詳細は2007年2月19-23日の間に、米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版で先行発表されます。