English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

ニュース

プレスリリース詳細

2026.07.08

ネナシカズラがセサミンを作る遺伝子を他の植物から獲得した仕組みの一端を解明

大阪公立大学
サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社
自然科学研究機構 基礎生物学研究所

<発表者>
大阪公立大学大学院農学研究科 青木 考教授
サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 小埜 栄一郎上席研究員
基礎生物学研究所 星野 敦助教
 
<概要>
寄生植物※1のネナシカズラは、大昔にゴマの仲間の植物からセサミン※2を作る遺伝子CYP81Qを取り込み、自身でセサミンを作るようになりました。本研究グループは、ネナシカズラがCYP81Qをどのように獲得したのか、その仕組みの一端を明らかにしました。本研究結果は、植物の多様性を生み出すシステムの解明に貢献すると期待されます。

本研究成果は、2026年6月30日に国際学術誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。

<ポイント>
① セサミンを作る遺伝子CYP81Qが、どのようにネナシカズラに取り込まれたかを調べた。
② ネナシカズラは遺伝子CYP81Qを獲得後、トランスポゾン3と呼ばれる動くDNAやイントロン4という介在DNAを挿入しながらも、セサミン合成機能を維持した。
③ この仕組みが、セサミンを作る遺伝子の種を超えた移動のもとになった。
 
<研究者コメント>
寄生植物であるネナシカズラは、寄生する相手の植物と常に接しており、多様な遺伝子を相手からもらっています。この研究では、ネナシカズラがいかにして他の植物からもらった遺伝子を自分のものとするのか、その仕組みの一端を明らかにしました。<青木 考・小埜 栄一郎>

fig1.jpg
図1 ゴマに寄生するアメリカネナシカズラ
 
<研究の背景>
生物界では、親から子へと遺伝子が伝わる垂直伝播という仕組みだけでなく、親子関係によらず異なる生物の間で直接遺伝子が伝わることがあり、遺伝子の水平伝播と呼ばれています。この現象は、生物が環境中に存在するDNAを取り込むことや、細胞同士の接触により遺伝子が伝わることが原因で起こるといわれています。植物の中には、自分の維管束を他の植物の維管束につなげて水や栄養分を取り込む寄生植物がいます。水や栄養分を得ると同時に、相手の植物から遺伝子も流入し、それらの一部は寄生植物自身のゲノムに固定されます。近年のゲノム解読技術の発達により、寄生植物は予想されていたよりも多くの遺伝子を水平伝播により獲得していることが分かってきました。水平伝播遺伝子の大多数は進化の途上で自分以外のものとして排除されますが、少数の遺伝子は寄生植物の一部となり、生きていくために役立てられます。しかし、流入した遺伝子がどのように寄生植物自身のものになるのかは、これまで分かっていませんでした。
 
<研究の内容>
本研究グループは、寄生植物の一種であるネナシカズラが、大昔にゴマの仲間の植物からセサミンを作る遺伝子を、水平伝播により獲得したことを見いだしました。このセサミン合成酵素遺伝子CYP81Qは、ネナシカズラの中でセサミンを作り始め、種の多様化とともにネナシカズラ属の仲間の種へと広がっていきました。それに従い、遺伝子CYP81Qに、ネナシカズラ由来のトランスポゾンと呼ばれる転移性DNAの侵入が起きました。また、遺伝子CYP81Qのセサミン合成酵素をコードするDNA配列にはイントロンが新たに挿入され、二分割、三分割、四分割と徐々に断片化されていきました。これは、遺伝子CYP81Qの構造を変えながらも、酵素活性は保持しつつ、ネナシカズラ自身のものとしていったと考えられます。本研究では、ネナシカズラが水平伝播した遺伝子をどのように自分のシステムの一部とするか、その仕組みの一端を解明しました。
 
fig2.jpg
図2 アメリカネナシカズラに水平伝播した遺伝子CYP81Qには、エキソン※5(E)の間に新たなイントロン(I)とトランスポゾン(灰色三角)が挿入された。
 
<期待される効果・今後の展開>
本研究では、トランスポゾンやイントロンの挿入などの遺伝子構造変化が、進化のスケールでは比較的最近に起こったことを示唆しました。日本各地に生育しているネナシカズラを調べることで、現在起こっている進化を身近に見られる可能性があります。また、植物同士でやりとりされる遺伝子とその後の変化は、自然界の多様性創出システムの一端であると考えられます。
 
<資金情報>
本研究の一部は、JSPS科研費(JP18H03950、JP19J14848、JP19H00944、25A305)ならびに公益財団法人大隅基礎科学創成財団 第7期研究助成(一般)の助成を受けて実施しました。
 
<用語解説>
※1 寄生植物:他の植物に取り付き、水や栄養分を奪って生活する植物。
※2 セサミン:ゴマなど限られた植物が作る、抗酸化作用がある化合物。リグナンの一種。
※3 トランスポゾン:ゲノム上のある場所から別の場所へと、飛び回るように移動できる特殊な機能があるDNA配列(動く遺伝子)。
※4 イントロン:遺伝子のDNA配列の中で、DNAからRNAへと情報が書き写された後、タンパク質の設計図として成熟する過程で切り捨てられる部分。
※5 エキソン:遺伝子のDNA配列の中で、DNAからRNAへと情報が書き写された後、タンパク質の設計図として成熟する過程で残る部分。
 
<掲載誌情報>
【発表雑誌】 Plant Physiology
【論文名】 Transposon-colonized intron gain follows parasitism-mediated horizontal transfer of a cytochrome P450 gene
【著者】 Eiichiro Ono, Kohki Shimizu, Jun Murata, Tenta Segawa, Akira Shiraishi, Ryusuke Yokoyama, Hiromi Toyonaga, Masaki Takagawa, Manabu Horikawa, Atsushi Hoshino, Koh Aoki
【掲載URL】 https://doi.org/10.1093/plphys/kiag335
 
【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学大学院農学研究科
教授 青木 考(あおき こう)
 
【報道に関する問い合わせ先】
大阪公立大学 広報課
 
サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社
広報担当
 
自然科学研究機構 基礎生物学研究所 広報室
TEL:0564-55-7628
E-mail:press@nibb.ac.jp