基礎生物学研究所
2011.11.23
名古屋大学高等研究院の安益公一郎特任助教と基礎生物学研究所長谷部光泰教授を中心とする研究グループは植物ホルモンのジベレリンが植物進化の過程でどのように使われるに至ったかについて世界で初めて解明しました。これにより、今後植物の生長・生殖制御への応用も期待できます。本研究成果は、平成23年11月22日付(イギリス時間)英国科学雑誌Nature Communications電子版に掲載されました。
【ポイント】
成長ホルモンであるジベレリン(20世紀の作物増収を引き起こした「緑の革命」に利用されたホルモン)が、植物進化の過程でどのように出現し、つかわれるようになったかを明らかにした。
【背景】
ジベレリンは植物の生長や生殖を制御すると知られているが、約4.5億年前に出現したコケ植物には存在せず、その後に誕生したシダ植物で初めて使われるようになったと考えられていた。
【研究の内容】
今回、研究チームはシダ、コケ、イネの胞子(イネでは花粉)が出来る生殖過程を詳細に調べたところ、この過程はこの3つの植物で非常に似ているが、イネとシダはこの過程のスイッチを入れるためにジベレリンが必要であるのに対し、コケ植物はジベレリンなしでスイッチが入ることが分かった。
【成果の意義】
この結果は、本来ジベレリンはコケ植物に既に存在した胞子・花粉の生殖システムを促すスイッチとして、後のシダ植物グループの誕生に伴って登場したことを示しており、植物ホルモンが植物進化の過程でどの様に出現し、つかわれるようになったかを具体的に明らかにした。
【用語説明】
ジベレリン:植物の生長や生長を制御する働きをもつ植物ホルモン
コケ:植物進化の過程で、陸上に誕生した最初の植物グループ
シダ:コケ植物の後に誕生した第2の植物グループ
【論文名】
タイトル: The Gibberellin perception system evolved to regulate a pre-existing GAMYB-mediated system during land plant evolution 「ジベレリン受容システムは、陸上植物の進化過程において既存のGAMYBシステムを調整するために誕生した」
全著者: Koichiro Aya, Yuji Hiwatashi, Mikiko Kojima, Hitoshi Sakakibara, Miyako Ueguchi-Tanaka, Mitsuyasu Hasebe, Makoto Matsuoka
掲載雑誌: Nature Communications誌
問い合わせ先:
名古屋大学 高等研究院/生物機能開発利用研究センター
特任助教 安益 公一郎(あや こういちろう)
Tel: 052-789-5225 Fax: 052-789-5226 Email: koichi.a@nuagr1.agr.nagoya-u.ac.jp
基礎生物学研究所 生物進化研究部門
教授 長谷部 光泰(はせべ みつやす)
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