山口大学
自然科学研究機構 基礎生物学研究所
【発表のポイント】
○ オートファジーが植物の気孔の開口を制御し、光合成を支える役割をもつことを発見した。
○ オートファジーが活性酸素を蓄積したペルオキシソームを分解することで、孔辺細胞における活性酸素の恒常性を維持していることを発見した。
○ ペルオキシソームの選択的オートファジー(ペキソファジー)の生理的意義を解明した。
山口大学大学院創成科学研究科の武宮淳史准教授、山内翔太研究員の研究グループは、基礎生物学研究所の真野昌二准教授らの研究グループとの共同研究により、オートファジー
※1が細胞内の活性酸素
※2の蓄積を抑制し、気孔開口を可能にすることを、世界に先駆けて発見しました。
植物の表皮に存在する気孔は、太陽光に応答して開口し、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みを促進します。一方、植物は乾燥などのストレスを感知すると、シグナル伝達物質として働く活性酸素を生成し、気孔を素早く閉鎖させます。このように環境に応答した気孔の開閉制御には、気孔を構成する孔辺細胞内の活性酸素量を厳密に制御することが重要です。しかし、活性酸素の恒常性がどのように制御されているのか、その仕組みについては謎でした。今回研究グループは、光に応答して気孔を開口できないシロイヌナズナ突然変異体の解析から、オートファジーが活性酸素を蓄積したペルオキシソーム
※3という細胞小器官を速やかに分解することで、活性酸素の恒常性を維持し、気孔開口を可能にすることを発見しました。
オートファジーによるペルオキシソームの選択的分解はペキソファジーと呼ばれ、真核生物に保存されたメカニズムです。しかし、これまで植物におけるペキソファジーの生理的意義は不明でした。本研究により、植物のペキソファジーは気孔開口の制御を通じて、光合成を支える役割をもつことが明らかになりました。本研究成果は、2019年9月2日の週に米国科学アカデミー紀要[Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)]の電子版に掲載されます。
【発表論文の情報】
タイトル: |
Autophagy controls reactive oxygen species homeostasis in guard cells that is essential for stomatal opening
(オートファジーは孔辺細胞における活性酸素の恒常性を制御し気孔開口を可能にする) |
著者: |
山内 翔太(山口大学)、真野 昌二(基礎生物学研究所)、及川 和聡(基礎生物学研究所)、曳野 和美(基礎生物学研究所)、手島 康介(九州大学)、木森 義隆(基礎生物学研究所)、西村 幹夫(甲南大学)、島崎 研一郎(九州大学)、武宮 淳史(山口大学) |
掲載誌: |
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) (2019) |
DOI: |
10.1073/pnas.1910886116 |
掲載日: |
2019年9月2日の週内 (報道解禁日時の設定はありません) |