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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

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プレスリリース概要

2018.11.27

メカノセンサーチャネルPIEZO1がリンパ管の弁の形成に必要であることを発見

自然科学研究機構 基礎生物学研究所
日本医療研究開発機構

細胞の振る舞いが機械的な刺激に影響されることは現在広く知られています。しかしながら、細胞が機械的な刺激を感知する分子メカニズムや機械刺激感知の生体内での寄与についてはまだまだ謎に包まれています。タンパク質PIEZO1/2は近年見つかった機械刺激-細胞内シグナル変換器として機能するメカノセンサーチャネルであり、細胞膜の張力変化に応じて開口し、細胞内に陽イオンを取り入れ、細胞内にその情報を伝えます。PIEZO1の機能減弱変異が、家族性リンパ浮腫の患者において確認されたことから、PIEZO1のリンパ系への寄与が示唆されていましたが、PIEZO1がどのようにリンパ系の発生や機能に関わっているのかはわかっていませんでした。

今回、基礎生物学研究所初期発生研究部門の野々村恵子助教、藤森俊彦教授らは、米国スクリプス研究所のArdem Patapoutian教授との共同研究により、内皮細胞におけるPIEZO1がリンパ管の弁の正常な発生に必要であることを遺伝子改変マウスの解析により突き止めました。リンパ管の弁はリンパ液が体内を正常に循環するために必要な構造であり、正常個体ではリンパ管の内皮細胞が内腔側へ突出することで形成されます。内皮細胞特異的PIEZO1欠損マウスでは、リンパ管の弁の数が減少しており、弁構造が管の内側へ突出する過程がうまく進行していないことが判明しました。本成果は、学術誌「米国科学アカデミー紀要」に掲載予定で、米国東部時間2018年11月26日の週にオンライン先行公開されます。

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図:PIEZO1欠損マウスでは、リンパ管の弁の形成が阻害される
 上:リンパ管の弁で発現が高いことが知られているインテグリンα9タンパク質を腸間膜にて染色した画像。白い部分(紫矢頭)に弁が形成されている。下:模式図。野生型リンパ管では弁(紫)が多数形成される(左)が、PIEZO1を欠損した場合には弁がほとんど形成されない(右)。