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基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2018.09.25

視覚の神経回路作りに働く酵素を同定:PTPRJによる視神経投射の制御

私たちが眼で物や景色を見ると、それらの像は眼の中の網膜と呼ばれる映画館のスクリーンのようなシート状の組織に映し出されます。これらの像の情報(視覚情報)は網膜でいったん処理された後(色や動きなどの要素に分解される)、脳内に伝えられます。視覚情報を脳に伝えているのが、網膜から脳内に長く伸びた視神経の軸索です。発生期においては、網膜から伸び出した視神経軸索は正しいルートを選択して脳内の目的領域に到達し、さらにその領域内で適切な相手を見つけ出して結合する(シナプス結合を作る)ことで神経回路を形成します。もし、正しい神経回路が作られないと、視覚に異常が生じます。

視神経の回路形成においては、Eph受容体と呼ばれる酵素(タンパク質のチロシンをリン酸化する酵素)が必須の役割を担っていることが明らかになっています。基礎生物学研究所 統合神経生物学研究部門の新谷隆史准教授と野田昌晴教授らは2006年に、ニワトリの視神経において、PTPROと呼ばれるタンパク質のチロシンに付いたリン酸をはずす酵素がEph受容体の働きを制御することによって、視神経の回路形成において重要な役割を果たしていることを明らかにしていました。

今回、同部門の于洋大学院生、新谷隆史准教授、及び野田昌晴教授らは、マウスでは、PTPROに代わってPTPRJがEph受容体の活性を制御していることを発見しました。研究グループはさらに、Eph受容体の反発性の情報伝達には、細胞内に分布しているc-Ablと呼ばれるタンパク質チロシンリン酸化酵素が必須の役割を果たしており、c-Ablの活性もPTPRJによって制御されていることを見出しました。すなわち、PTPRJはEph受容体とc-Ablの両者の活性を制御することにより、視神経の回路形成において重要な役割を果たしていました(下図参照)。本成果はThe Journal of Neuroscience誌(2018年9月26日付)に掲載されます。

fig.jpg 図. PTPRJはEph受容体とc-Ablの両活性を制御することにより、マウスの視神経の回路形成に働いている