基礎生物学研究所
2018.01.18
細胞は外界の環境の変化に応答して、増殖や分化の制御を行っています。この制御系において中心的な役割を果たしているのが、真核生物に広く保存されたキナーゼ複合体であるTOR複合体1 (TORC1)です。単細胞真核生物である分裂酵母においても、TORC1が、栄養源の有無に応答した無性生殖と有性生殖の切り換えを制御していることが知られています。しかし、TORC1が栄養状態の変化を認識する仕組みには、不明な点が多く残されていました。今回、基礎生物学研究所の大坪瑶子研究員、山本正幸所長、山下朗特任准教授らは、タンパク質合成で欠かすことのできない働きをする古典的ノンコーディングRNAであるtRNAの前駆体が、栄養状態に応答したTORC1の活性制御において重要な働きをしていることを明らかにしました。本成果は2018年3月にEMBO reportsに掲載予定で、1月12日にオンライン上で先行公開されました。
図. tRNA前駆体によるTORC1活性制御のモデル図