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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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プレスリリース概要

2007.01.13

大腸菌環状ゲノムの線状化に成功

生物の遺伝情報を担っているのは染色体(ゲノム:以下ゲノムと呼称)ですが、それには線状のものと環状のものがあります。我々人間を含め、動物・植物のゲノムは細胞の核の中に存在し、全て線状です。一方バクテリア等の原核生物のゲノムは、ほとんどが環状でできています。何故そうなったかについては分かっていません。その理由を探るために、基礎生物学研究所の堀内 嵩教授らの研究グループは、良く知られたバクテリアの一つ、大腸菌の環状ゲノムの線状化に挑戦し、世界で初めて成功しました。大腸菌に感染するウイルスであるN15ファージの能力を応用し、環状のゲノムに切れ込みを入れ、環を開いて線状化する方法を用いました。ゲノム中のDNAは2本の鎖状分子が縒り合わさった二重らせん構造をもっていますが、今回の手法で線状化すると、その末端は2本の鎖が切れ目無く連続したヘアピンのような状態になっています。驚いたことに、線状ゲノムの菌は、環状ゲノムの菌と同様に、正常に生育しました。生育ばかりでなく、他の性質についても、ほとんど変わりませんでした。また、この線状ゲノムへの変換では、ゲノムの末端をどこに持ってくるかが重要であることが明らかになりました。正常に生育するのは、ゲノムの中央に複製開始点があり、両腕の長さが同じ場合です。両腕の長さが違えば違うほど、生育が悪くなり、極端に違うと生存出来ませんでした。この成果は世界で初めての環状ゲノムの線状化成功であると共に、線状化に用いた手法はゲノム工学の技術として注目されます。研究の詳細は、2007年1月13日、EMBO reports誌オンライン版で先行発表されます。