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2012年08月20日
植物の茎葉の起源に迫る遺伝子の発見

基礎生物学研究所(総合研究大学院大学)の青山剛士博士課程大学院生と長谷部光泰教授を中心とする研究グループは、植物の茎葉の起源に迫る遺伝子を見つけました。これにより、植物がどのように陸上で進化してきたのかについて研究が進展することが期待されます。本研究成果は、英国発生学専門誌Developmentの2012年9月1日号に掲載されます。(オンライン版が先行公開されました。)

 

ポイント:植物の茎葉が最初に進化したときに必要だった可能性の高い遺伝子を発見

 

[研究の背景]

植物は光合成で栄養分を作ります。光を求めて、たくさんの葉をつけた茎を伸ばし、互いに競争することで、植物はどんどん大きくなりました。しかし、陸にあがってすぐの頃は、茎や葉を持っていなかったことが知られています。では、植物はどのように茎や葉を進化させたのでしょうか。コケ植物セン類注1)はこの問題を解決するのに適した材料です。なぜなら、水の中に住む藻類に似た細胞分裂や成長様式を持つ糸状の体(原糸体)と地上に適応した茎葉を作る体(茎葉体)を環境によって作り分けているからです(図1)。

 

fig1.jpg図1 コケ植物セン類ヒメツリガネゴケの茎葉を作る体(茎葉体:左図)と藻類に似た体(原糸体:右図)

 

[研究の内容]

研究グループは、コケ植物ヒメツリガネゴケを用い、茎葉を作るのに必須な遺伝子APBを発見しました。この遺伝子は多くの遺伝子を制御する遺伝子(転写因子)で、壊すと茎葉体ができず、原糸体だけしか作れなくなってしまいました。

 

fig2.jpg

図2 APB遺伝子が壊れたヒメツリガネゴケは茎葉体ができない。

APB遺伝子が壊れていないヒメツリガネゴケ(左)とAPB遺伝子が壊れたヒメツリガネゴケ(右)。茎葉体を矢印で示した。

 

[成果の意義]

APB遺伝子の進化が、茎葉を作る最初の段階で重要だった可能性が高く、植物の茎葉進化の起源を探る糸口になると期待されます。

 

[用語解説]

注1)コケ植物セン類

植物が陸上化した初期に、他の植物から分かれた群。セン類はコケ植物の仲間で、コケ庭などに用いられる。

 

[論文情報]

英国発生学専門誌 Development 9月1日号(電子版が先行して公開されています。)

論文タイトル:AP2-type transcription factors determine stem cell identity in the moss Physcomitrella patens

著者:Tsuyoshi Aoyama, Yuji Hiwatashi, Mikao Shigyo, Rumiko Kofuji, Minoru Kubo, Motomi Ito and Mitsuyasu Hasebe

 

[研究グループ]

本研究は基礎生物学研究所(総合研究大学院大学)の青山剛士大学院生、日渡祐二助教(現英国Aberystwyth大学)、長谷部光泰教授が、東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系の執行美香保元大学院生、伊藤元己教授、金沢大学自然科学研究科の小藤累美子助教、元科学技術振興機構ERATOの久保稔グループリーダーとの共同研究によって行われました。

 

[研究サポート]

本研究は、文部科学省科学研究費補助金、科学技術振興機構のサポートを受けて行われました。

 

[本件に関するお問い合わせ先]

基礎生物学研究所 生物進化研究部門

教授 長谷部 光泰(はせべ みつやす)

Tel: 0564-55-7546 Fax: 0564-55-7549

Email: mhasebe@nibb.ac.jp

 

[報道担当]

基礎生物学研究所 広報室

広報担当 倉田 智子

TEL: 0564-55-7628 FAX: 0564-55-7597

E-mail: press@nibb.ac.jp