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2009年09月01日
オオバコの仲間は雑種だらけ ~日本古来のオオバコは、大陸産のセイヨウオオバコの雑種から生じた~

基礎生物学研究所の石川直子研究員、山形大学の横山潤教授、東京大学の塚谷裕一教授からなる研究グループは、道端に生えて、踏まれても踏まれても丈夫に育つことで世界的にも身近な雑草、オオバコの仲間について遺伝子解析を行い、日本古来のオオバコは、ユーラシア大陸に広く分布し最近日本への帰化が見られるセイヨウオオバコの雑種から生じた種(しゅ)であることを明らかにしました。また、広くオオバコ属の類縁関係を調べ、驚くほど多くのオオバコ属植物が、互いに複雑に入り組んだ雑種の関係になっていることを明らかにしました。この成果は、アメリカ植物学会が編集する国際誌、American Journal of Botany誌2009年9月号に掲載されます。

[研究の成果]

 日本で見られるオオバコ属には、日本古来のオオバコ(図1)と、帰化植物のセイヨウオオバコ(図2)とがあります。これら2種は互いによく似ており、いろいろな図鑑に区別点が書かれてはいますが、実際には見た目での区別が非常に困難です。研究グループは、それぞれの植物のDNAの遺伝子配列を解析し、その系統関係について調べました。その結果、オオバコはセイヨウオオバコと未知の別の種(しゅ)との間で出来た雑種を起源とすることが明らかとなりました。これらの種(しゅ)の見た目での区別が難しいのは、種(しゅ)の成り立ちから考えて、当然だったのです。

090901fig1.jpg図1:オオバコ

090901fig2.jpg図2:セイヨウオオバコ

 さらに面白いことに、南西諸島に見られるオオバコ類似の種類(図3)については、以前から、タイワンオオバコという別種にする考えのほか、オオバコであるという見解と、セイヨウオオバコであるという見解とがありました。遺伝子解析の結果、この南西諸島に分布する種類は、オオバコでもセイヨウオオバコでもなく、別種(タイワンオオバコ)であること、さらにこのタイワンオオバコはセイヨウオオバコ由来の雑種であるオオバコに、もう一度セイヨウオオバコが交雑した種(しゅ)が起源となってできた種(しゅ)であることが判明しました。

090901fig3.jpg図3:タイワンオオバコ

 また、研究グループは、今回の研究において、世界のオオバコ属24種類に関して遺伝子解析を行い、その類縁関係について明らかにしました。

 一般的に、異なる種間の交配によって出来た雑種植物は、子孫を残すことができません。ところが、遺伝子の全セットが2倍に増える「ゲノム倍化」という現象が起きると、雑種でも子孫を残すことができ、新たな種が生じるきっかけになります(図4)。オオバコ属では、異なる種間の交配とゲノム倍化を何度も繰り返し、世界に分布を広げながら多様な種(しゅ)に進化してきたことが、今回、明らかになりました。

090901fig4.jpg図4:雑種形成と倍数化の過程を示す概念図

 こうしたことが、これまで気づかれていなかったのは、互いに形態的によく似た種を、むりやり形で分類してきたこと、それと、雑種を調べるのには不適当なDNA配列をつかった解析しかなされてこなかったことにあります。今回、研究グループは、雑種の関係を決めるのに適切な新たなDNA配列情報を使い、以上のような新しい知見を得ることができました。

 塚谷教授は「身近な雑草として、オオバコの仲間が、世界中の温帯地域で人の暮らしの周りでたくましく生き延びてきた背景には、このように、雑種を作っては両親の性質を併せ持ったり、新しい性質を獲得したりして、環境に適応してきた歴史があるのではないでしょうか」とコメントしています。

[発表雑誌]

アメリカ植物学会誌 American Journal of Botany
2009年9月号掲載
(8月13日付けでオンライン先行発表)

論文タイトル:
"Molecular evidence of reticulate evolution in the subgenus Plantago (Plantaginaceae)

著者:Naoko Ishikawa, Jun Yokoyama, and Hirokazu Tsukaya (石川直子、横山潤、塚谷裕一)

[研究グループ]

本研究は、基礎生物学研究所(石川、塚谷)、東京大学(塚谷)、山形大学(横山)の共同研究として実施されました。

[研究サポート]

本研究は文部科学省科学研究費補助金および住友財団環境研究助成、財団法人環境科学総合研究所研究助成のサポートを受けて実施されました。

[本件に関するお問い合わせ先]

東京大学大学院理学系研究科
教授:塚谷 裕一 (ツカヤ ヒロカズ)
(基礎生物学研究所 植物発生遺伝学研究部門 客員教授)
Tel: 03-5841-4047 (研究室)
E-mail: tsukaya@biol.s.u-tokyo.ac.jp
URL: http://www.nibb.ac.jp/bioenv2/indexj.html

基礎生物学研究所 植物発生遺伝学研究部門
研究員:石川 直子 (イシカワ ナオコ)
Tel: 0564-55-7513 (研究室)
E-mail: nakoo@nibb.ac.jp

[報道担当]

基礎生物学研究所 広報国際連携室
倉田 智子
Tel: 0564-55-7628
E-mail: press@nibb.ac.jp

東京大学大学院理学系研究科 広報室
横山 広美
Tel: 03-5841-8856
E-mail: kouhou@adm.s.u-tokyo.ac.jp