バイオインフォマティクスを専門としない生物学研究者で、これから次世代シーケンシング(NGS)データの解析を行おうとしている方を対象に、ゲノムインフォマティクスの基礎的技術と考え方を身に着けることを目的としたコースです。
本コースは2日間の日程で開催されます。データ解析を行う際の共通の基盤として、UNIXオペレーティングシステムや統計解析パッケージRの基本的な使い方を学んだ上で、NGS解析と統計学の基礎を学習し、NGSデータ解析を想定した演習を行います。
受講者数
受講生32名 聴講生9名(応募総数200名)
開催報告
ゲノムインフォマティクス・トレーニングコース (GITC) は、次世代シークエンサー (NGS) の登場により、大規模なシークエンスデータを解析する必要に迫られた実験生物学者を対象としたインフォマティクス技術のトレーニングコースです。手持ちのデータを解析するために直ちに必要となるプログラムの使い方など実践的な内容に加えて、大規模なデータ解析を行う際に必要となる計算機操作や統計的な考え方など、実験生物学者があまり触れてこなかったと思われる基礎的な内容にも力を入れた構成になっています。「RNA-seq入門」は、解析プラットフォームとしてのUNIXやRの使い方とNGSデータの基本的な取扱いを習得する「準備編」と、実際にRNA-seqデータを処理し、統計解析を行って生物学的に有用な結果を得るまでの流れを習得する「実践編」の二部構成で、基礎から実践までを学べるGITCの看板コースですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、昨年度末に予定していたコースのうち実践編が開催できず、延期になっていました。
今年度は、まず延期になっていた「RNA-seq入門・実践編」をオンラインで6月に開催しました。講義形式の授業とハンズオン形式のコンピュータ演習を並行して行いますが、特に初心者がつまずきやすいコンピュータ演習には、フロアサポートによるきめ細かい対応を行っています。これをオンラインでどう実現するかが問題でしたが、Zoomによる講義とチャットによる個別の質問対応を組み合わせて行うことにしました。また、コンピュータ実習の主要部分は基生研のサーバにログインして行うことで、受講生の準備の負担を減らすようにしました。当日は不安もありましたが、幸い大きなトラブルもなく、懸案となっていたチャットでの質問対応を含めて、受講生からの評価は概ね良好でした。
その後、この経験を踏まえて「RNA-seq入門」コースをオンラインでもう一度開催しましたが、受講生のスキルにばらつきがあることなどを考慮し、従来二部構成で行っていたものを独立した二つのコースに分けて、準備編相当の本コース「NGS解析入門」を11月に、実践編相当の「RNA-seq入門」を3月に実施しました。その際、「NGS解析入門」に統計学入門を組み入れ、「RNA-seq入門」ではGeneOntology解析を強化するなど、内容の見直しも行いました。オンラインでの講習も、我々が経験を積んだことと、世の中のオンライン化の流れが定着したことが相まって、スムーズにいくようになってきました。オンラインでの開催により、来所しての参加が難しい方でも参加できるようになり、より多くの方に門戸を開くことになりました。それを反映してか、応募者も最大で200人に達するなど、大きく増加しました。残念ながら、チャットによるきめ細かい対応を行うために受講生を大きく増やすことはできませんでしたが、そうした対応を行わない「聴講生」の参加枠を設けることで、少しでも多くの方に参加していただけるようにしました。
オンライン開催が好評であることから、今後コロナ禍が収束したとしても、何らかの形でオンライン開催は継続していくことになると思われます。今後とも内容や方式についての検討を重ね、より良いコースにしていきたいと思います。
オーガナイザー 内山 郁夫(生物機能解析センター 情報管理解析室)