English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

国際連携

国際的な活動 - 連携活動

第38回 国際生物学賞記念シンポジウム "魚の生物学:その生態、進化と発生"

Organizers 日本学術振興会 / 自然科学研究機構 基礎生物学研究所
Venue 岡崎コンファレンスセンター(愛知県)+オンライン配信
Date Dec. 17-18, 2022
Link Official Website (https://www.nibb.ac.jp/ipbsympo38/)
Poster 第38回 国際生物学賞記念シンポジウム
第38回 国際生物学賞 受賞者
塚本 勝巳 博士 (東京大学名誉教授)
「ニホンウナギ産卵場の発見」
 
 国際生物学賞は、昭和天皇の御在位60年と長年にわたる生物学の御研究を記念するとともに、本賞の発展に寄与されている上皇陛下の長年にわたる魚類分類学(ハゼ類)の御研究を併せて記念し、生物学の奨励を目的とした賞です。本賞は昭和60年に創設され、以後毎年1回、生物学の授賞分野を選定の上、当該分野の研究において優れた業績を挙げ、世界の学術の進歩に大きな貢献をした研究者(原則として毎年1人)を選考して授賞しています。今年は「魚の生物学(Biology of Fishes)」分野から塚本勝巳博士(東京大学名誉教授)が選ばれました。
 塚本勝巳博士は、古来より人々の興味をかき立ててきた「動物の旅」に関心を抱き、特に海と川を行き来する「通し回遊魚」に関する研究を展開しました。塚本博士の最も偉大な功績は、海洋生物学に残された最大級の謎であったニホンウナギの産卵場の発見です。博士は1990年代以降、世界のウナギ研究を先導し、有史以来の謎であったウナギの産卵回遊生態の全貌を解明しました。この研究は先生ご自身が執筆された『うなぎのなぞを追って』と言うタイトルで小学校4年生の国語の教科書(光村図書)にも掲載されています。
 以上のように、塚本博士は魚の生物学の発展に大きく寄与したばかりでなく、自身の知識や経験、哲学を提供することにより、広く調和的かつ持続的な人類社会の発展への貢献は高く評価されるものであり、第38回国際生物学賞の授賞対象分野「魚の生物学」に最もふさわしいと判断され、授賞が決定されました。
 今回、塚本博士の受賞を記念して、本シンポジウムが開催されました。

ipbsympo38_1.jpg ipbsympo38_2.jpg

開催報告
令和4年12月17日と18日に、岡崎コンファレンスセンターで第38回国際生物学賞受賞記念シンポジウム「魚の生物学:その生態、進化と発生」が開催された。本シンポジウムは、第38回国際生物学賞を受賞した東京大学名誉教授の塚本勝巳先生を記念して、自然科学研究機構基礎生物学研究所と独立行政法人日本学術振興会の主催で行われた。塚本先生は、魚類の回遊現象や生活史多型の解明、耳石を用いた標識技術の開発、そしてウナギの産卵場所の発見など、魚類の生物学において多くの貢献をされた。本シンポジウムでは、塚本先生の研究に関連する分野とともに魚類の多様な生物学を牽引してきた国内外の著名な研究者が招待され、魚類の生態、進化、発生に関する最新の知見や課題について講演した。オンサイトとオンラインのハイブリッド開催ということもありアジア圏を中心に海外からのオンライン参加も多く見られた。

12月17日は、英語による研究者・大学院生向けのプログラムで、75名が会場に参加し、さらにオンラインでは189名が視聴した。まず、病気療養中の塚本先生に代わり受賞記念講演として青山潤東京大学教授より「Discovery of Japanese eel spawning sites: A major scientific achievement of Dr. Katsumi Tsukamoto*Lecture on behalf of Dr. Katsumi Tsukamoto」が行われた。塚本研究室の准教授として参加された青山先生ならではの立場からウナギの産卵場所を発見するまでの苦労や喜びを振り返り、ウナギの回遊や産卵に関する最新の知見を紹介した。次に、招待講演者9名がそれぞれ研究テーマで講演した。

12月18日に国内向け日本語シンポジウムとしてオンサイト(80名参加)とオンライン(274名参加)のハイブリッドにて開催された。塚本先生の研究室の大学院生としてウナギの産卵場所の発見に参加した黒木真理博士のご講演「うなぎ博士・塚本勝巳先生の超然たる研究から学んで」により塚本勝巳博士の研究業績と人柄が紹介された。その後は国内から12名の若手研究者中心の講演者が魚の分子遺伝学、分類学、生態学、進化学、発生学などの様々な分野にわたる研究について発表した。各講演では、魚類のさまざまな側面について最新の研究成果や課題が紹介され、活発な質疑応答がおこなわれた。

12月19日は招待講演者と関係者による伊勢方面へのエクスカーションを行った。伊勢神宮にて日本文化を紹介した後、水産研究・教育機構 水産技術研究所 南勢庁舎(旧増養殖研究所)を訪れ、「ウナギ完全養殖の進展」について須藤グループ長より講演をいただくと共にウナギ養殖施設の見学を行った。本シンポジウム開催後にはウナギ胚を用いた国際共同研究が実施されるなど、本シンポジウムを介した研究者間のインターラクションも活発におこなわれている。
成瀬 清(バイオリソース研究室/NBRPメダカ)
 

ipbsympo38_all.jpg
 

 

Program
DAY1 : Dec. 17th (For Researchers) in English
12月17日 研究者向け英語講演
9:00-9:05 ROpening remarks : Kiyokazu Agata (National Institute for Basic Biology)
   
9:05-9:35 Jun Aoyama (The University of Tokyo)
Discovery of Japanese eel spawning sites: A major scientific achievement of Dr. Katsumi Tsukamoto
*Lecture on behalf of Dr. Katsumi Tsukamoto
   
9:40-10:10 Eric Feunteun (National Museum of Natural History)
The eel syndrome: a thirty years quest to unravel the mysteries of iconic and threatened fishes
   
  Shinji Takada (National Institute for Basic Biology, Japan)
   
10:15-10:45 Kurt Fausch (Colorado State University)
Food webs in space: the influence of individual fish behavior on linked stream-riparian ecosystems
   
10:45-11:00 Short break
   
11:00-11:30 Lynne R. Parenti (Smithsonian Institution)
Phylogeny and Diversity of the Medaka and Relatives: Discoveries and Challenges
   
11:35-12:05 Masaki Miya (Natural History Museum and Institute, Chiba)
The mitogenomic contributions to molecular evolution and ecology of fishes: revealing the patterns of diversity through space and time
   
12:05-13:30 Lunch break
   
13:30-14:00 Catherine L. Peichel (University of Bern)
Replaying the tape of life: how predictable is evolution?
   
14:05-14:35 Manfred Schartl (University of Würzburg)
Structure, function and evolution of fish genomes
   
14:40-15:10 Goro Yoshizaki (Tokyo University of Marine Science and Technology)
Germ cell manipulation in fish: Little tuna produces bluefin tuna sperm
   
15:10-15:30 Short break
   
15:30-16:00 Hideaki Takeuchi (Tohoku University)
Exploring the neural geography of the fish social brain
   
16:05-16:35 Didier Stainier (Max Planck Institute for Heart and Lung Research)
Genetic compensation in zebrafish, and beyond
   
16:35-16:40 Closing remarks : Hiroyuki Takeda (The University of Tokyo)


DAY2 : Dec. 18th (For General Public) in Japanese
12月18日 一般向け日本語講演
9:00-9:05 開会挨拶:成瀬 清(基礎生物学研究所)
   
9:05-9:50 黒木 真理(東京大学)
うなぎ博士・塚本勝巳先生の超然たる研究から学んで
   
9:50-10:20 渡辺 佑基(国立極地研究所)
マグロの速度、サメの奇妙な泳ぎ方
   
10:20-10:50 石川 麻乃(東京大学)
ゲノムから探る!海から離れたサカナたちのサバイバル術
   
10:50-11:00 休憩
   
11:00-11:30 佐橋 玄記(水産研究・教育機構)
海へ行く?それとも川に残る?―サケ科魚類にみる2つの生き方
   
11:30-12:00 前田 健(沖縄科学技術大学院大学)
海を渡る淡水魚
   
12:00-12:30 平瀬 祥太朗(東京大学)
日本海の隔離がもたらした魚の進化
   
12:30-13:40 休憩
   
13:40-14:10 川口 眞理(上智大学)
タツノオトシゴに見られる育児嚢の進化
   
14:10-14:40 四宮 愛(基礎生物学研究所)
季節の変化と生物の変化 ―メダカで調べる動物の季節適応
   
14:40-15:10 竹花 佑介(長浜バイオ大学)
メダカの多様性からわかったオスメス決定のしくみと進化
   
15:10-15:20 休憩
   
15:20-15:50 横井 佐織(北海道大学)
メダカの恋愛学
   
15:50-16:20 神田 真司(東京大学)
脳から調べる魚の繁殖生理学
   
16:20-16:50 津田 佐知子(埼玉大学)
光で探る脳の発生のしくみ
   
16:50-16:55 閉会挨拶:黒木 真理(東京大学)