English

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

  • Home
  • ニュース
  • > 「乗っ取り再生は可能か?プラナリア(ナミウズムシ)の幹細胞をキタシロウズムシに移植【ニコニコサイエンス】」を1月15日(土)午後5時より中継開始

ニュース

お知らせ

2022.01.14

「乗っ取り再生は可能か?プラナリア(ナミウズムシ)の幹細胞をキタシロウズムシに移植【ニコニコサイエンス】」を1月15日(土)午後5時より中継開始

基礎生物学研究所はniconicoと共同で、「乗っ取り再生は可能か?プラナリア(ナミウズムシ)の幹細胞をキタシロウズムシに移植」と題し、基礎生物学研究所の阿形研の実験室よりニコニコ生放送にて、驚異の再生能力を持ち、切断された破片から個体を再生することが可能なプラナリア(ナミウズムシ)の幹細胞を取り出して、X線照射して幹細胞を失くした別種のプラナリア(キタシロウズムシ)の体に移植する実験の様子をリアルタイムで配信します。

講義・観察・実験を組み合わせた放送で、2022年1月15日(土)17時より放送開始し、16日(日)21時放送終了の予定です。

niconico_science2022.jpg
番組ページ
https://live.nicovideo.jp/watch/lv335294095

 
 
出演者
agata.jpg  
阿形 清和 所長(基礎生物学研究所)
 
ishida.jpg  
石田 美雪 研究員(基礎生物学研究所)


【異種間キメラ移植実験の意義】
当研究室のプラナリア(ナミウズムシ、Dugesia japonica)は 1990 年に 1 匹のプラナリアだったものを無性生殖だけで 30 年間増やし続けている。すなわち、プラナリアの高い再生能力を支える成体の多能性幹細胞は、細胞としての寿命を持たずに個体の再生産(種の保存)を担っていることを示唆している。しかし、本当に成体の多能性幹細胞がエンドレスに個体の再生を担っていることを証明するのは簡単ではない。今までに、X 線を照射して幹細胞を除去したプラナリア(基本はそのままだと死亡する)に 1 個の多能性幹細胞を移植して、ある頻度で死亡からレスキューすることに成功していることから、1 個の多能性幹細胞の移植でプラナリアの個体を作れる--と言われている。ただ、同種間移植では X 線照射で生き残った残存の幹細胞や、X 線照射に耐性の分化した細胞が脱分化(幹細胞化)して個体をレスキューした可能性は排除できない。
 
そこで、今回の異種間キメラ移植実験が登場する。ナミウズムシ同士での幹細胞移植実験では、どうしても「元の幹細胞が残っていたのでは?」「分化した細胞が脱分化して幹細胞化したんじゃないの?」という指摘に反論することができない!!すなわち同種間での移植実験では、それらの指摘を否定するのは極めて難しい。しかし、異種間移植で同じようにレスキュー実験が成功すれば、多能性幹細胞が、個体の再生および種の保存を担う根源的な細胞でことを実証できることになる!!
 
本実験では、体色も違い、頭の形も違うプラナリア(キタシロウズムシ)をホストとして、ナミウズムシの成体の多能性幹細胞を移植して体色が茶色くなり、頭も三角形になってナミウズムシに変身できれば、成体の多能性幹細胞で個体が作られることを完全証明できることになる。
 
また、いまのところマウスでもプラナリアでも多能性幹細胞の塊を作っても個体になることはない(ホストとなる体があってキメラができあがる)。すなわち、多能性幹細胞単独で個体を作ろうとすると、多能性幹細胞から卵細胞を経ない限りできないということになる。これは、1 つの細胞から体の作るために必要な位置情報を多能性幹細胞は自律的につくれないことを示唆している。逆説的に言うなら、大きな 1 細胞である卵は発生のための栄養だけではなく、発生に不可欠な位置情報を自律的に作れるから個体をつくることができる—と言える。別種間のプラナリアで移植実験を行うことで、移植先のホストの体の位置情報を使って多能性幹細胞は個体を作ることになる。その結果として、ナミウズムシの細胞を移植した場合でも、体色は茶色なったにもかかわらず、形はキタシロウズムシになる可能性もあり、ナミウズムシの多能性幹細胞のゲノム情報が形を決めるの主導権を持つのか、キタシロウズムシの位置情報がナミウズムシの幹細胞の制御権を持つのかを知ることができる。