大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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国際連携

EMBL - 連携活動

EMBL 滞在記 (村田 隆)

Organizers 生物進化研究部門 : 村田 隆
Venue EMBL Heidelberg
Date Dec. 4-6, 2013

 基生研のEMBL訪問支援を受け、2013年12月4日から6日までの3日間、EMBLに滞在して研究発表とディスカッションを行いました。非常に密度の高い3日間でした。

 私は細胞の中で細胞骨格がどのように作られて配置するかを研究しています。細胞骨格は細胞内の繊維状構造で、細胞内の輸送ネットワークの軌道であるとともに、細胞自体の形を作ります。人工物に例えるなら、鉄道の線路に似ている一方で、ビルの鉄骨に似ている面も持っています。しかしながら、これらの人工物と違う点は、細胞骨格は全体の配置が一見変わらないように見える場合でも、新しい繊維の構築と古い繊維の崩壊が常に起こっていることです。細胞を観察すると、1本1本の繊維の構築と崩壊は偶発的に起こっているように見えますが、全体としては非常にうまく配置されていることが不思議に思えます。この疑問を解決するためには、遺伝子の解析や細胞骨格1本1本の動きを追うだけでは不充分で、コンピュータを使った新しいアプローチが必要に思えました。しかしながら、基生研には数理生物学を得意とする人はいますが、細胞骨格を対象としている人はいません。そこで専門家と共同研究するため、EMBLに訪問しようと考えました。

今回の滞在の受け入れはAdvanced Light Microscopy Facility(ALMF)で画像解析コーディネーターとして働いているKota Miura(三浦耕太)さんにお願いしました。彼の専門は顕微鏡画像解析で、実際のデータと研究目的をもとに、研究者が適切な画像解析方法を選択するためのコーディネートをしています。現在の画像解析は多種多様なツールがあるため、研究者が目的に応じたツールを選び、それに適した方法で画像取得するのは困難な状況です。一方で、プログラミングの専門家は生物材料の実際や顕微鏡画像を撮る際の制約はわかりません。そのため、プログラミングの専門家と画像を撮る人をつなぎ、適切な画像解析を行うための知識と経験を持った人が必要となります。三浦さんは私の専門である植物の微小管にも興味があるため、喜んで受け入れていただきました。

 今回の滞在の最も大きな目的は、EMBLの所内セミナーを行い、その後に紡錘体形成のシミュレーションの専門家であるFrancois Nedelec博士との研究討論をして、シミュレーションソフトウエアの使い方を習うことでした。幸い、Nedelecさんは非常に好意的で、彼が作ったソフトウエアCytosimの紹介をしていただき、今後の研究連絡を継続する話がまとまりました。

 EMBLの制度で興味深かったのは、2つの研究室の共同ポスドクの制度があることです。ClapsonさんはNedelec labとHeisler labの共同ポスドクで、植物の表層微小管の配列メカニズムについて、シミュレーションを用いて解析しています。Heisler labは植物の発生を研究している研究室で、実際の植物を扱っているのに対し、Nedelec labはシミュレーションが中心の研究室です。このようなわけで、Clapsonさんはシミュレーションを用いて植物の表層微小管の配列メカニズムについて解析しています。この分野は私の専門なので、3日間しかない滞在期間の中ですが、初日と3日目の2回にわたって非常に突っ込んだ内容の討論を行いました。初日はClapsonさんの研究紹介、3日目は私の研究に対するアイデアの討論をしました。日本国内で同様な視点で研究している研究者はいないため、非常に有益な情報交換でした。

 本訪問の当初の予定はNedelec, Heisler, ALMFとの情報交換およびセミナーのみだったのですが、EMBLは想像以上にインタラクティブな環境で、予定以上に多数の研究者と情報交換することができました。ここに書き切れないのが残念です。特に、昼食後や他の時間にカフェテリアに行き、コーヒーを飲みながらディスカッションできるのは、とても良い点だと思います。現在のEMBLの研究者には物理系の出身が多いそうです。新しい顕微鏡の構築や、数理モデルによるシミュレーションなど、現在の発生・細胞生物学には物理系出身の人材が必要な場面が多々あると感じます。この滞在で得たことを今後の研究に生かし、分野横断的な研究を進めていこうと思います。

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