先端バイオイメージング支援プラットフォーム (ABiS) は、文部科学省科学研究費助成事業において、平成28年度より開始された新学術領域研究「学術研究支援基盤形成」(平成28年度〜平成33年度)に採択された生命系プラットフォームの 1 つです(研究支援代表者:狩野方伸・生理学研究所/東京大学)。生命科学の研究分野において、イメージング技術は分子、細胞、組織から個体に至るまで多階層での解析に必須であり、バイオイメージングの必要性は今後ますます重要になると予想されます。しかしながら、イメージング機器の多様化・先端化、高額化、操作技術や撮影した画像の解析技術の高度化などにより、個々の大学や研究機関において、先端イメージング機器を導入し、 整備・運用することは困難になってきています。ABiS は、基礎生物学研究所と生理学研究所を中核機関として、各種の先端・特殊イメージング機器を運用している国内の20の大学・研究機関から構成され、光学顕微鏡支援、電子顕微鏡支援、磁気共鳴画像支援、画像解析支援、トレーニングにより、我が国における生命科学を包括した先端イメージングの支援を行うことを目的としています。
海外では、欧州諸国を対象としたEuro-Bioimaging (EuBI) が設立され、国を超えたイメージングネットワーク構築によって国境を越えて相互に協力する体制が整備されています。その活動はさらにGlobal Bioimaging (GBI) プロジェクトとして、欧州のみならずインド、オーストラリア、シンガポール、南アフリカ共和国、カナダ、メキシコ、アメリカ合衆国が参加することで世界へと広がり、地球規模でのバイオイメージングの国際連携、ネットワーク構築へと進みつつあります。
これまで基礎生物学研究所は、GBIが毎年開催するExchange of Experience (EoE、 実績・経験に基づく意見交換のための実務者会議) にGBIのサポート機関として参加し、情報交換を図ってきました。この度、ABiSが日本のバイオイメージングネットワークの代表として正式にGBIに参加することとなり、去る9月15日、EoE III(オーストラリア・シドニーで開催)において調印式がおこなわれました(写真)。
調印式にて、ABiS事業の中核機関の実施責任者である山本正幸基礎生物学研究所長と井本敬二生理学研究所長の署名による締結文書を持参した上野直人教授とGBI代表のJan Ellenberg博士。
この国際連携によってABiSが国際標準を満たすレベルまで支援の質を高め、さらに国を超えて新しい観察・解析手法を共有することが可能になることが期待できます。また、イメージング施設のスタッフや若手研究者のためのトレーニングコース開催やキャリアパスに関する議論、データ共有システム構築や産学連携推進、バイオイメージングの将来に向けたグローバル戦略の策定など、日本のイメージング分野の活性化につながる国際連携が期待されます。
再来年(2020年)開催の次々回EoE Vは日本がホスト国となり、秋に岡崎で開催予定です。