基礎生物学研究所
2011.03.29
(2011年03月29日)
Cellular and Molecular Life Sciences (CMLS)は、生物学、生物医学の最新のレビュー集や研究論文を掲載するスイスの国際総合学術誌です。4月号では、基礎生物学研究所の川口正代司教授の 編集でThe Evolution of Symbiotic Systems(共生システムの進化)と題した特集を組んでいます。これは、2010年1月、掛川市・つま恋で開催された第7回生物学国際高等カンファレ ンス(OBC)タイトル「共生システムの進化」(注)の参加者によるもので、マラリア原虫のもつ色素体、アブラムシと細胞内共生微生物、シロアリの多層共 生系、根粒共生系、菌根共生系、人工共生系の最新のトピックを含めた6編のレビューより構成されています。特集号の表紙は、重信秀治特任准教授によるアブ ラムシ胚をDNA染色した共焦点顕微鏡の写真です。内容については、こちらをご参照ください。
【緒言】
Masayoshi Kawaguchi (NIBB)
The Evolution of Symbiotic Systems
(共生システムの進化)
【総説1】
Shigeharu Sato (MRC National Institute for Medical Research, UK)
The apicomplexan plastid and its evolution
(マラリア原虫のもつ色素体とその進化)
【総説2】Shuji Shigenobu (NIBB), Alex C. C. Wilson (University of Miami)
Genomic revelations of a mutualism: the pea aphid and its obligate bacterial symbiont
(ゲノム科学が明らかにする相利共生の姿: エンドウヒゲナガアブラムシとその絶対共生細菌)
【総説3】
Yuichi Hongoh (Tokyo Institute of Technology)
Toward the functional analysis of uncultivable, symbiotic microorganisms in the termite gut
(シロアリの腸における培養できない共生微生物の機能解析に向けて)
【総説4】
Kazuhiko Saeki (Nara Women’s University)
Rhizobial measures to evade host defense strategies and endogenous threats to persistent symbiotic nitrogen fixation: a focus on two legume-rhizobium model systems
(宿主防御と内因性の脅威に対抗して窒素固定共生を成立させる根粒菌側の手段:マメ科植物-根粒菌共生の2つのモデル系に着目して)
【総説5】
Keisuke Yokota, Makoto Hayashi (National Institute of Agrobiological Sciences)
Function and evolution of nodulation genes in legumes
(マメ科植物における根粒形成遺伝子の機能と進化)
【総 説6】 Babak Momeni, Chi-Chun Chen, Kristina L. Hillesland, Adam Waite, Wenying Shou (Fred Hutchinson Cancer Research Center, USA)
Using Artificial Systems to Explore the Ecology and Evolution of Symbioses
(人工システムを用いた共生の生態と進化の探索)
(注) 第7回生物学国際高等カンファレンス(OBC)「共生システムの進化」
共生は、生物のゲノム、代謝ネットワーク、シグナル伝達等のダイナミックな変化を伴う現象で、相互作用の統合的理解が必要です。第7回OBCでは、多様な共生現象を扱う研究者が集い議論することによって、「共生システム」という新しい基礎科学の方向を探りました。