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2011.02.25

研究を支える生き物たちシリーズ1「シロイヌナズナ」

花の形を決める遺伝子を調べる
シロイヌナズナ(学名:Arabidopsis thaliana

■カエル の子はカエルですし、人間の親からは人間が生まれます。そればかりか、子供はふつう体つきや顔が親に似ています。これは遺伝子の働きによるものです。遺伝 子は4文字で書かれた文章のようなものですが、遺伝子がどのようにしてかたち作りをしているか、まだよくわかっていません。遺伝子がすべて解読されている シロイヌナズナは、遺伝子の働きのしくみを調べるために最も良い植物です。

■遺伝子が次の世代に伝わるときに、たまたまどこかに間違いが 入ってしまうことがあります。これが突然変異です。突然変異は、個々の遺伝子の役割を知るための重要な手がかりを与えてくれます。下の写真は一つの遺伝子 がこわれただけで、シロイヌナズナの花がどんなに変わった形になってしまうかを示しています。(右端だけは二つの遺伝子の変異体)

■花の形を決める遺伝子の働き
 花は外側から、がく、花びら、おしべ、めしべが並んでいます。シロイヌナズナの花は一番左の写真にある通り、4枚のがく、4枚の花びら、6本のおしべ、1つのめしべからできあがっています。

 左から2つめのpan-1変異体はがく、花びら、雄しべの数がそれぞれ5つになっています。PAN遺伝子が壊れてしまったことで本来は4つづのものが、5つに変わってしまったのです。つまりPAN遺伝子は正しい数のがく、花びら、おしべを作るのに必要な働きを持っていることがわかります。

 左から3つめのag変異体の花は、八重咲きになっています。これは本来ならばおしべ、めしべができる場所が、それぞれ、がく、花びらができる場所に換わってしまっているのです。このことはAG遺伝子の働きはおしべとめしべが正しい位置に作られるのに必要であることを示しています。

  一番右の変異体はAP1とCALという2つの遺伝子が壊れたものです。この変異体の植物では、本来花ができる場所に、花のもとになる細胞が細胞分裂を繰り 返してできた細胞の塊ができあがります。この変異体がつくる細胞の塊は私たちが口にするカリフラワーとよく似ているので、カリフラワーではAP1とCAL が働かなくなっていると考えられています。

■植物の形づくりを理解する
 このように、いくつもの遺伝子が正しく働くことで正常な 花が作られます。植物の中に花を作るのに必要な遺伝がいくつあるかはまだわかっていません。花だけでなく、葉や茎や根を作るのに必要な遺伝子もたくさんあ ると推測されます。私たちは形が変化する変異体を見つけてそれを調べることで、1つ1つの遺伝子がもつ働きを明らかにしながら、植物の形がどのように決ま るのかを明らかにしようとしています。

 

nazuna600.jpg

花の形を決める遺伝子を調べる