基礎生物学研究所
2009.09.14
岡田清孝所長が2009年度日本植物学会学術賞を受賞することが決まりました。学術賞は、プライオリティーと独創性の高い研究を行い、論文等が国際的に高く評価される者に授与されるものです。日本植物学会第73回大会において、授賞式および受賞講演が行われます。なお、この賞は、2007年度は大隅良典教授、2008年度は長谷部光泰教授の受賞で、基生研からの受賞が続いています。
岡田清孝所長 受賞コメント:
「錚々たる先生方に混ざって今回受賞することになり、光栄です。
私は、昭和61年より研究テーマを大きく変え、基礎生物学研究所において志村先生とともに植物の分子遺伝学解析を始めました。その際に、シロイヌナズナをモデル植物として用いる国際的な植物分子生物学のコミュニティを日本に定着させることが重要と考え、毎年基礎生物学研究所において「シロイヌナズナワークショップ」を開催して、同じ頃にシロイヌナズナを用いた研究を開始した東京大学の米田先生や内藤先生、理化学研究所の篠崎先生、名古屋大学の町田先生、京都大学の岡先生などと一緒にシロイヌナズナを用いた研究の方向、予備的な実験成果、新たな実験技術の開発、などについて発表し議論しました。また、若手研究者を対象とした「シロイヌナズナ実験トレーニングコース」を開催して基礎的知識と基盤的実験手法の広報に努めました。新たに組織された国際的なシロイヌナズナ研究組織Multinational Arabidopsis Research Steering Committeeのメンバーとして、ゲノム解析プロジェクトや2010プロジェクトの企画にも関与しました。
基礎生物学研究所の研究室においては、シロイヌナズナを用いた分子遺伝学研究の適用範囲を実際に提示することを目的として、花・葉の器官形成、根の器官形成、重力・光・接触などに対する刺激応答機構の三つの研究テーマを選んで、forward geneticsによる解析(すなわち、突然変異体の選抜・変異形質の定性定量的解析・変異遺伝子のマッピングと単離同定・変異遺伝子の構造発現解析と機能解析)の実例を示すことに努力してきました。平成8年から19年までは京都大学理学研究科において、平成19年からは再度基礎生物学研究所において研究室を運営していますが、基本的な方向は変わっていません。
研究テーマが分散してまとまりがないという反省もありますが、シロイヌナズナを用いた実験系の有効性を示すことを目的として、植物分子生物学における重要な研究テーマを自分なりに選び出して解析してきた結果です。
ゲノム解析が急速に進展し、研究対象となる植物種の選定に大きな制限がなくなった今日では、モデル植物の持つ役割が変わってきました。日本の教育研究の予算が年々減少している中で植物科学研究の今後の発展を保証するために、植物科学研究者コミュニティとして長期計画を考える必要があるでしょう。その中でモデル植物の新たな意義を再考することが求められていると考えています。」