基礎生物学研究所
2005.09.02
遺伝子増幅作用はゲノムの改変を伴う転写調節機構で、環境適応応答や進化に重要な役割を果たして来た。また一方で臨床的には、癌遺伝子の増幅は癌の悪性化を加速し、加えて制癌剤に対する薬剤耐性遺伝子の増幅はその治療効果を著しく低下させている。このように遺伝子増幅は生物学的にも医学的にも重要な現象であるが、その分子機構ついては不明な点が多い。今回、小林とガンレイは、増幅遺伝子の一つであるリボソームRNA遺伝子の増幅が、coding領域を持たない双方向性の転写プロモーター(E-proと命名)からの転写活性により制御されていることを発見し、9月2日発行の米科学誌Scienceに報告した。
小林とガンレイによると、E-proの転写は、姉妹染色分体接着因子(コヒーシン)をゲノムから外す働きがあり、そのため染色分体間の不等位組み換えが引き起こされ、遺伝子増幅が誘導される。さらにE-proの転写活性は老化抑制タンパク質Sir2によって制御されていることが判明し、E-proを介したrDNAの安定性(組み換え頻度)が、細胞の老化速度を決定していると考えられる。
Kobayashi. T. and Ganley, A. R. D. (2005). Science, 309, 1581-1584,
2005/09/02 Science
2005/09/02 中日新聞(朝刊)
2005/09/02 日経産業新聞