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2013年11月01日
シロアリ3種の大規模な遺伝子カタログ作製に成功

シロアリは、家屋害虫として悪名高い昆虫ですが、社会性昆虫として基礎生物学的に大変興味深い昆虫でもあります。王・女王アリや働きアリ、兵隊アリなど、形態も行動も異なるカースト(階級)個体が分業して集団生活を営みます。このように学術的にも人間社会においても大きな存在感を持つシロアリですが、これまでこの昆虫がどのような遺伝子をもっているのかあまり分かっていませんでした。

 

今回、北海道大学地球環境科学研究院の三浦徹准教授、シドニー大学の林良信研究員らの研究グループは、基礎生物学研究所の重信秀治特任准教授らと共同で、シロアリ3種の大規模な遺伝子カタログ作製に成功しました。今回の研究に使ったシロアリは、オオシロアリ(Hodotermopsis sjostedti)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、タカサゴシロアリ(Nasutitermes takasagoensis)の3種です。お互い系統的に離れており、地理的分布、生態、形態、社会構造が異なります。それぞれの種から、なるだけ多様な発現遺伝子を網羅的にしらべるために、カースト、発生段階、性別の異なる18〜25ものカテゴリーのサンプルからRNAを抽出して標準化cDNAライブラリを構築し、それらを次世代DNAシーケンサーと呼ばれる大規模塩基配列解読装置を用いて解析しました。その結果、3種のシロアリそれぞれで、1万個以上の遺伝子を同定しました。ほかの昆虫が持っていない新規の遺伝子も数多く発見しました。さらに、シロアリの遺伝子にはDNAのメチル化が起きている可能性を示唆するデータも得られました。DNAメチル化とは、DNAの塩基に付加される化学修飾で、塩基配列の変化を伴わない後天的な遺伝子制御に関わっていることが多くの生物で分かってきています。シロアリの社会性は産まれた後に受ける外的要因に基づいて「後天的に」運命づけられることがわかっており、DNAメチル化と社会性の関連について今後の研究展開が期待されます。

 

基礎生物学研究所は、生物学研究に有用な新しいモデル生物の確立および解析技術開発に向けて、他研究機関の研究者と所内の研究者が共同で行なう研究「モデル生物・技術開発共同利用研究」を推進しており、本研究もそのひとつです:課題名「社会組織化の分子機構とその進化過程解明のモデル昆虫『シロアリ』のゲノム科学的研究基盤の構築」(代表:北海道大学・三浦徹准教授)。本成果は、科学雑誌「PLoS ONE」に9月30日に掲載されました。

 

詳しい研究報告はこちら(北大のプレスリリースのPDFに飛びます。)

 

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今回の解析に用いられた3種の日本産シロアリ。上から,オオシロアリ Hodotermopsis  sjostedti,ヤマトシロアリ Reticulitermes speratus,タカサゴシロアリ Nasutitermes  takasagoensis

 

Hayashi Y, Shigenobu S, Watanabe D, Toga K, Saiki R, et al. (2013)

Construction and Characterization of Normalized cDNA Libraries by 454 Pyrosequencing and Estimation of DNA Methylation Levels in Three Distantly Related Termite Species. PLoS ONE 8(9): e76678.

doi:10.1371/journal.pone. 0076678