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大学共同利用機関法人 自然科学研究機構

基礎生物学研究所

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オルガネラ制御研究室

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研究の概要

植物の高次機能を支えるオルガネラ形成と機能発現の仕組み


種子が発芽して成長し、再び種子を残して枯れるという植物の営みには、オルガネラ(細胞小器官)の機能と形態の変動が伴っています。オルガネラは、細胞の成長や分化だけでなく、植物の生育環境に応答して、機能や数、形、大きさを変化させます。こうした柔軟なオルガネラの動的変動が、環境と一体化して生きている植物の高次機能を支えています。私たちは、分子から細胞、植物個体に至る様々な階層での解析から、オルガネラ形成や機能発現がどのように制御され、それが植物の高次機能をどのように支えているのかに興味をもって研究を行っています。

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発芽後のシロイヌナズナ子葉の電子顕微鏡写真


挿入図はGFPにペルオキシソーム輸送シグナル(PTS1: Peroxisome targeting signal 1)を融合させて可視化させたペルオキシソーム(上の写真)と、オイルボディ膜のタンパク質であるオレオシンをGFPに融合させて可視化させたオイルボディ(下の写真)。Mt; ミトコンドリア、N; 核、Ob; オイルボディ、P; ペルオキシソーム、V; 液胞


植物ペルオキシソームの形成機構と機能発現

ペルオキシソームは、植物や動物、酵母など真核細胞に存在するオルガネラで、植物では脂肪酸代謝や光呼吸、ジャスモン酸の生合成、活性酸素種の除去など様々な機能をもつ。これらの機能が低下すると種子の発芽不全、植物個体の矮性化、配偶体の認識異常などを引き起こすことから、ペルオキシソームの機能が、植物の一生を通じて必要であることが明らかとなっている。ペルオキシソームが正常な機能を発揮するには、遺伝子発現に加え、ペルオキシソームへのタンパク質輸送、他のオルガネラとの相互作用、ペルオキシソーム内部でのタンパク質分解、ペルオキシソーム自身の分解による品質管理等、様々な制御が必要であるが(図1、文献1,4,5)、その分子機構は完全には解明されていない。私たちは、ペルオキシソーム形成と機能発現に関わる因子の同定とそれらの制御機構、それが破綻した際の植物への影響を、モデル植物のシロイヌナズナやゼニゴケを主な研究材料として明らかにしようとしている。
 

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図1. ペルオキシソームタンパク質輸送におけるユビキチンシステム
(A) ペルオキシソームタンパク質レセプターのPeroxin 5 (PEX5) やPEX7は、ペルオキシソーム内で積荷タンパク質を離した後、サイトソルへと戻り、次のタンパク質輸送に関わる。このペルオキシソームからのレセプターの輸送にユビキチン化が必要である。(B) 我々が単離したapem変異体のうち、apem4apem7apem9はユビキチン化因子の変異体であり、タンパク質輸送効率が低下した結果、サイトソルでGFPが検出される。(C) apem7変異体では親株のGFP-PTS1と異なり、ユビキチンが結合して離れなくなったPEX4が検出され、異常なユビキチン化が生じていることが明らかとなった。


種子における貯蔵物質の集積機構

種子は、多量の脂質やタンパク質、糖質を蓄積する。このうち、脂質は小胞体由来のオルガネラであるオイルボディに、タンパク質は液胞由来のオルガネラであるプロテインボディに蓄積する。植物は、これらの貯蔵物質を発芽や発芽直後の生長のエネルギーとして利用する。貯蔵物質の蓄積量や組成は植物の種類によって異なり、その生合成の制御機構も異なっている。私たちは、様々な植物における貯蔵物質の合成と蓄積、および分解機構の解明に取り組んでいる(図2、文献2,3)。
 

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図2. 種子貯蔵タンパク質の3’UTRを利用した外来タンパク質の蓄積
(A) 大腸菌には様々なタンパク質が存在するのに対し、シロイヌナズナ種子には主に12Sグロブリンと2Sアルブミンが蓄積している。これら貯蔵タンパク質遺伝子の3’UTRに遺伝子発現を促進する機能があり、種子では本来発現していないペルオキシソームのリンゴ酸脱水素酵素 (MDH) に12S1遺伝子由来の3’UTRを繋げるとその蓄積を著しく増加させることが可能となる (B, C)。


植物用Gateway vectorの開発

Gateway技術を利用した植物研究に有用なDestination vectorを開発し、国内外の植物研究者に利用してもらっている(文献6)。
 

植物オルガネラ画像データベースの構築

植物オルガネラ研究の基盤整備として、The Plant Organelles Database 3(PODB3)を運営している。PODB3には、全国の植物研究者から提供された植物オルガネラの静止画や動画、電子顕微鏡写真、実験プロトコールが収集されている。さらに、一般の方向けのサイト「植物オルガネラワールド」も公開している。

共同研究利用の募集

オルガネラの可視化やタンパク質相互作用、植物用Gateway vectorの開発についての共同研究を進めています。また、植物オルガネラデータベース (PODB3; Plant Organelles Database 3, http://podb.nibb.ac.jp/Organellome/) を、当研究所の情報管理解析室と共同で構築・運営しています。こちらへのデータの登録や利用についてもご相談下さい。


【先端バイオイメージング支援プラットフォーム】

先端バイオイメージング支援プラットフォーム (ABiS; Advanced Bioimaging Support, https://www.nibb.ac.jp/abis/)は、科研費課題を支援する目的として、平成28年度より発足した新学術領域研究 学術研究支援基盤形成の一つです。ABiSでは、基礎生物学研究所と生理学研究所を中核機関としたネットワークを構築し、先端機器・先端技術を用いたイメージング支援を行っています。ABiSの基生研事務局を担当しています。支援についてのご相談、ご質問がありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

研究室関連資料

参考文献

1. Mano, S., Hikino, K., and Kanai, M. (2024). Ubiquitination on the peroxisomal membrane for protein transport in plants. In Modifications in Biomacromolecules - Edited by Zhan, X., and Jabbari, A. IntechOpen pp.27-49.  
 
2. Kanai, M., Sugiyama, M., Kondo, M., Yamada, K., Nishimura, M., and Mano, S. (2023). Fusing the 3’UTR of seed storage protein genes leads to massive recombinant protein accumulation in seeds. Sci. Rep.13, 12217. 
 
3. Kanai, M., Hikino, K., and Mano, S. (2023). Cloning and functional verification of endogenous U6 promoters for the establishment of efficient CRISPR/Cas9-based genome editing in Castor (Ricinus communis). Genes 14, 1327. 
 
4. Mano, S., Hayashi, Y., Hikino, K., Otomo, M., Kanai, M., and Nishimura, M. (2022). Ubiquitin-conjugating activity by PEX4 is required for efficient protein transport to peroxisomes in Arabidopsis thaliana. J. Biol. Chem. 298, 102038.
 
5. Goto-Yamada, S., Oikawa, K., Yamato, T.K., Kanai, M., Hikino, K., Nishimura, M., and Mano, S. (2022). Image-based analysis revealing the molecular mechanism of peroxisome dynamics in plants. Front. Cell Dev. Biol. 10, 883491.
 
6. Mano, S., Nishihama, R., Ishida, S., Hikino, K., Kondo, M., Nishimura, M., Yamato, T.K., Kohchi, K., and Nakagawa, T. (2018). Novel gateway binary vectors for rapid tripartite DNA assembly and promoter analysis with various reporters and tags in the liverwort Marchantia polymorpha. PLOS ONE 13, e0204964.

連絡先

真野 昌二 准教授 E-mail: mano@nibb.ac.jp

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